トロイメライ
真っ白な病棟に一人。
呼吸器に繋がれ、誰にも看取られず呼吸が出来ない息苦しさと痛みに、苦しみながら死んでいく自分。
寛人の時に何度想像したか分からない風景が目の前にあった。
ーーー死にたくない。
何度も何度もその光景を思い浮かべては恐怖し、考えないように思考を他にやって目を閉じても、夢の中でも苛まれる死への恐怖。
ーーー嫌だ。怖い。死にたくない。
強がって、「大丈夫」だと自分に言い聞かせて。
そうやって押し隠していたはずの気持ちだったはずなのに、隆二には簡単に見抜かれた。
帰れと言っても隆二はテコでも動かず、入院をする時は必ず隆二も病棟で寝泊まりしてくれて。手を握る暖かさを確認するだけで、一人じゃないと分かって嬉しかった。
何度悪夢に魘されて起きても、隣に居てくれるだけで安心できた。
死と向き合う恐怖。隆二が居なかったら、きっと、とうの昔に心が死んでいた。
目を開ければ隆二が居る。
「傍にいて」
『傍にいるよ』
記憶の中の隆二が優しく微笑めば、更に深く意識が沈んで行った。