もう逃げない


 Why is God so cruel or just a whim?(神はなんて残酷なのか、それともただの気まぐれなのか)


 きっとそうじゃない。
 神様は乗り越えられない試練は与えない。


 さっきまでは諦めかけていて、あんなにも斯波が怖く見えたはずなのに、今は憐情が、同情心の方が強く勝っていた。


 もう逃げない。あの時、そう決めた。


 そっと手を伸ばす。
 いきなり抵抗をやめた俺を、斯波が怪訝そうに見返してくる。


「俺とやれば、お前の寂しさはなくなるか?」


 ゆっくりとそう問えば、斯波の目が大きく揺れた。


「今までそうやって身体を重ねて、寂しさは埋まったか? 満たされるものはあったか?」


 次の問いをすれば、斯波の目に怒りの色が混じった。


「そんなこと、小鳥ちゃんには関係ない」

「でも、だからと言って放っとけない」

「なら、俺に……俺とセックスしてよ」

「本当にそう望むなら」

「望むよ」


 斯波の頬を撫でる。なぜだか斯波が泣きそうで脆く見えた気がした。



「じゃあ、なんで初めて会ったとき最後までしなかったんだ?」


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