違和感の正体
斯波といて、何度か話し、漠然とした違和感は感じていた。
いつも取り巻きに囲まれて自信に溢れているかと思えば、自虐的でネガティブな発言が垣間見えた。
精神も強く簡単には凹まなそうに見えて、些細な事で普段とは様子が違ったりもした。
その抱える矛盾を思春期の葛藤だと安易に括ってしまっていたのだ。
斯波が男を取っ替え引っ替えしている事も噂で聞いていた。女も男も両方行けると自ら豪語し、可愛い子を愛でる事は自らの義務とさえ言い切っていた。
諦めた頭は徐々に冷静さを取り戻す。
床に押し倒され上に乗っかられた時、ふとある事象が頭の中で繋がった。
こいつが満たされないのも、伊吹の時と似ているんだ、と。
愛情への飽食。
それにしがみついている限り、斯波が満たされる事はない。他の何かで埋めた所で絶対に満たされない。
満たされる時がくるとしたら、それにしがみつくのをやめた時だ。
それにしがみつくのをやめ、一人で居る自分に自信が持て無ければ、また同じ事を繰り返し、埋まらない空虚感を他で埋めるだろう。
愛されている実感がない。
その寂しさを埋める為に何度も身体を重ねる。だが、身体を重ねれば重ねる程、空虚さは増していく。
そうして幾人も幾人も行為を重ねるうちに、愛を深め合う行為であるそれ自体に愛を感じなくなるのだろう。知らず知らずのうちに己の価値を低め、どんどん傷ついてしまうのだろう。
そうして出来上がった手負いの獣が斯波だ。
結局、愛されている実感がない。
これに尽きる。