快楽の拷問3


「おいっ」


 明らかに怒った斯波の声が後からついてくるが、縺れる足を必死に前に動かした。


 逃げないと。


 その一心で扉までたどり着く。
 扉を開けようとした時、斯波が悪魔の一言を冷たく言い放った。


「その姿で外に出て、どうするんだ? その格好で助けを呼ぶのか?」


 シャツは乱れ、下半身剥き出しの己を振り返って愕然とした。
 扉を押す手は躊躇し、内心戸惑っている間にまた再び斯波に腕を取られた。「ひっ」と恐怖に怯えた声が喉にひっかかる。


「そんなに怯えるなよ」

「いやだっ……、やめろっ!離せっ!!」


 大声を出して斯波を拒絶する。斯波が一瞬傷ついたような表情をしたが、次の瞬間には狂気が混じった顔に戻った。


 もう駄目だ。
 斯波も俺も完全に冷静さを欠いた状態で、もうどうにもならない。


 こうなる前になぜもっと早く気がつかなかったのか。
 伊吹の時にあれだけ反省したというのに、その反省がなにも活かされていなかったということなのか。


 思い返せば、思い当たる節はいくつも転がっていたというのに。



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