揃いの傷痕


 意図的にやったことではないが、結果として伊吹を深く傷つけていたことを深く反省した。伊吹にこんな哀しい顔をさせる位、自分は酷いことをしたのだ。

 自分は何をしているのだろう。

 今を大切にせずに、過去のことばかり気にして。そう言われてもきっと仕方がない。


「ごめん……」


 そう謝れば、伊吹がもっと泣きそうな顔をして俯いた。
 伊吹が唇を噛み締めて、何かを堪えるようにしている姿をみて胸が締め付けられるような想いだった。

 
 伊吹が何も言わずに俺の手を引いて車に行き、山口さんに「学園へ」とだけ告げた。学園への道中はあのおしゃべりな伊吹がずっと無言で、山口さんが時折こちらを伺うように見ていた。






 学園へ着けば荷物はそのままに、車内からずっと繋がれていた手を引かれて伊吹の部屋までたどり着いた。
 同室も違えば部屋の雰囲気も違い、可愛いらしいキャラクターグッズが多く、雑多な印象を受けた。


「同室の子は?」


 チワワに似た可愛らしい同室を思い出してそう聞けば、「ハワイ」とだけ答えてずんずんと部屋の奥へと引っ張られて行く。
 伊吹の部屋は自分のと似ている。元々、寮の俺の部屋を作ったのが伊吹なだけあって、家具のチョイスは同じだ。

 何度かきたことがある部屋まで連れてこられると、手を引かれてベッドへと倒れ込んだ。



 ぎらりと欲望に光る伊吹の目を見た時、そこまできてようやく伊吹がしようとしている意図を知ることになった。

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