ヒグラシの鳴く夏の終わり3
そのことの言い訳を考えれば考える程、嘯いているようにしか感じられず結局口からついてきたのは苦し紛れとしか思えない言葉だった。
「なんとなく、もう一度来てみたくなって」
「お墓に?」
「……ああ」
「ふうん」
冷め冷めとした返答に汗がどんどん冷えていく。
どこからか飛んできたアブラゼミが鳴き始める。その鳴き声はじりじりと追いつめられる様を嘲笑っているかのようだった。
「なんで隠すの? 普通に理事長と約束してたって言えばいいじゃん」
「約束してない。本当に会ったのはたまたまなんだ」
「それを僕に信じろっていうの? 忘れ物もしてないのに忘れ物って言った織に、隠し事がないって、僕が信じられると思ってるの?」
返す言葉もなく黙り込むしかなかった。
忘れ物がないのに、意味もなく霊園に来るはずがない。
一般的に考えればそうだ。伊織と寛人の関係性など、薫を通しての僅かな部分でしかないのだ。
理事長が同じ墓の前に現れたとなれば、約束をしていたと考えるのもおかしくない。
「織って時々ひどく残酷なことするよね。それも無意識に」
伊吹の潤んだ目は俺の視線から外されて、哀しげにそう呟いた。