I’m not there, I don't sleep.4
「理事長は」
「ん?」
――なんで毎月此処に?
という疑問は言葉にならなかった。
聞きたい気持ちをぐっと堪える。
「いえ、なんでもないです」
「伊織くんは彼とは、どういう知り合いなの?」
代わりに問いかけてきた隆二の目は真っ直ぐにこちらを向いていて、背中にじわりと汗が浮かぶ。瞳には疑問がありありと浮かんでおり、答えを間違えてはいけないと本能的に感じた。
「水無瀬薫くんから高校のバスケ上手かったって聞いて、それで気になったんです」
「ああ、それで。県でも有名な選手だったからね」
「そうなんですか」
「うん、すごいスリーポインターだったんだ。彼が投げた瞬間、不思議と外れる気がしないんだよ。実際外れないんだけど」
昔のことを思い出すような遠くを見つめる目をして嬉しそうに話す隆二に、自分は何かとてつもないミスを犯してしまったような気分になった。
この間は感じなかった。
月命日に墓参りをしているという事実を知らなかったから。
「前にも話したかな」
「はい……」
前に体育館で会った時も、隆二は寛人の話をしていた。
隆二の中で俺は過去の人になっていないのだろうか。月命日に墓参りに行くという行為は、寛人を忘れられていない何よりの証拠ではないだろうか。それとも郷愁からきているものなのだろうか。
その問いの答えを知る術はない。
けどもしそうであったなら?
そう考えると残酷なことを強いている反面、どこか胸の奥をこみ上げる情動があった。