I’m not there, I don't sleep.3
ふぅっと息を吐いて視線を上げた隆二が、見つめていた俺に気がつく。
「どうしたの? 僕の顔になんかついてる?」
「あ……すみません」
慌てて目を逸らした俺を、隆二が軽く微笑した。
「僕のこと嫌い?」
「え?」
「いや、別に嫌いでもいいんだ。入学手続きとか、伊織くんにとっては急なことだったから」
「違っ」
「ごめんね。でも、君たちの事を聞いて、少しでも学園生活楽しんでくれたら良いなって思っただけなんだ」
「別に嫌いじゃないです」
えっ?と隆二の視線が真っ直ぐにこっちを見ていた。
「学校はすごく有意義で楽しいです。サボってる所を見つかった手前、こんな事言っても説得力はないかもしませんが。理事長には本当に感謝しています、ありがとうございます」
逃げていても始まらない。
目をそらしても、きっと隆二の中の寛人は確かにこの墓の前に眠っているのだろう。
今度は真っ直ぐに隆二を見返した。
「良かった」と言って、隆二がにっこりと微笑んだ。