I’m not there, I don't sleep.2
どうしてここに?という顔をした隆二がこっちを見ていた。いつも気まずい別れ方をしていた手前、今更何を話せば良いのか考えあぐねてしまう。
「伊織くんもお参り?」
お参りと言えばお参りなのだろう。でも、伊織と寛人の接点を説明しろと言われたら。
ぐるぐると回る思考回路は、ドツボにはまっていくようだった。
「お参りに決まっているよね。ごめんね、変な事聞いてしまったね」
「いえ……」
話はそこで途切れた。
そこから逃げ出す事も、歩き出す事も出来ずに、まるで棒になったかのように動かない足を持ちながら、隆二が花を添えるのを呆然と見ていた。桶に入っている水を墓石にかけ、砂を落としていく。一通り水をかけ終わると、ポケットから線香の束を取り出し、ライターで炙るように火をつけた。
「君もいるかい?」
束の半分を差し出された手と顔を見比べる。
「もしかして、持ってきてたかな?」
「いえ……持ってないです。ありがとうございます」
線香を自分の墓前に添える。
不思議な光景に現実味を失っていくような気がした。
形だけ手を合わせ、隣の隆二をみれば、真剣に手を合わせ目を閉じている姿があった。
ここに寛人は眠ってない。
俺はここにいるのに。
なんかの歌で、そんな歌詞の歌があったけど、本当にその通りだった。