日下のモテる理由
「一位になったやつって、それだけでモテるんだよ」
「今までもモテてたけど、一位とるとそれが比じゃない」
何に、とは言わなかったが、文化祭の流れからなんとなく予想はついた。
「え?」
困惑する俺をよそに、話がどんどん進んで行く。
「そうそう。頭が良いってのは、あいつらにとって将来が確定しているのと同義だからな」
「じゃなかったら、日下がモテる理由が分からん」
「確かに!」
そう言ってると、ガラっと教室の扉が開くのが分かった。
意志の強そうな目が印象的だった。その光を讃えた目が真っ直ぐに俺を見つめる。
「あれ、土岐津(ときつ)?」
日下が呟いた。
「知り合いか?」
「バトミントン部の後輩、やったと思うで」
色んな部のピンチヒッターをしていると、顔も広くなるらしい。
「へえ」
視線を外すはずだったが、予想外に俺の席の前で土岐津と呼ばれた生徒が止まる。
「お初お目に掛かります、1年の土岐津一志と申します。小鳥遊伊織さんにお願いがあって、本日伺いました」
「俺に?」
「はい」
その顔が妙に真剣で、どこか憂いを孕んでいる目から逸らす事が出来なかった。