目聡いわんこ
「はあ、最近こんなんばっかだな」
一日の密度の濃さにどっと疲れて、ベッドに座りこむ。
「伊織さん優しいですから。その優しさにつけ込まれないか不安です」
「お前がいうな、お前が」
「斯波にもつけ込まれたんでしたよね? 何されたんですか?」
「……何もされてない」
じっと、訝しむ目で神が俺の事を見る。
「俺の言う事信じるんじゃなかったのか?」
「寝てない事は信じますよ。でも、斯波が何もせずに伊織さんを返すとも思えませんし、俺キスしてる所は見たんですよね」
そういえば、と思い出す。
最初に教会に入ってきた時に、斯波にキスされているのを目撃されている。2回目に入ってきた時には、お別れのキスをされそうにもなった。
神の目聡さに、半ば呆れる。
「キスだけだ」
「嘘ですね?」
「……」
間髪入れずに聞かれた問いに、思わず言葉が詰まる。
しまった。と思った時には、大体餌を巻いている後だ。
「伊織さん」
「なんだ?」
「お願いがあるんですが」
不自然な笑顔で神が笑った。