信じる強さ
「寝てないし、話したのも今日が初めてだ」
「……」
信じられない、そう言われても仕方がない事は重々承知だった。
教会で寝てたらキスされた。秘密を聞かれて、逆らう術もなかった。全ては終わった事で、今更どうあがいても変わらない事実を覆す術などない。
半分開き直りにも近い形で、信じて貰えないかもしれないけど、そう呟けば、更にお腹に回った手に熱と力が篭った。
「信じますよ」
掠れた声で、耳元で囁かれれば、ゾクリと身体中の毛が粟立った。
「信じます。あなたがそう言うなら」
今度は強い口調だった。
「なんで……?」
「前にも言いましたが、俺が唯一大切に思う人だからです。世界中があなたの敵であったとしても、俺にとってあなたが世界の全てだ。味方にならない理由はないんです」
こうまで真っ直ぐでいられる神を、俺は羨ましいと思った。
バスケや研究、そう言った類いのものには脇目も振れないのに、自分の事になるとそうもいかなくなる。
信じる。
手放しでそう言った神の言葉に、胸がすく思いがした。
「神は強いな」
「伊織さん?」
「俺もお前みたいに、真っ直ぐであれたら……」
出来ないとは分かっていても、そう望まずにはいられない。