Betrayal2

 そして、今に至るわけで。
 俺は、以前仕事部屋だと連れてこられた部屋の奥にある、仮眠室にいた。


「すぐに終わらせてきますから、待っていてください」


 それだけ言うと、俺をベッドに座らせて、神は部屋を出て行った。
 不幸中の幸いと言えば、此処に来るまでの間他の生徒に見られなかった事だろう。日が落ちた時間帯だったからか、カードキーを通さないと入れない裏口から入った事もあってか、日下達の恐れる事態にはならなかった。

 全部神の考えあっての事なのだろう。

 あれだけの事をしたのに、俺にとってのベストを違えない。


 裏切り。理由はどうあれ、神の好意を踏みにじった事には変わりなかったのに。
 俺は自己嫌悪に頭を抱えた。

 相当怒っていた。俺を扱う手は優しかったが、辺りも凍るような空気に、息が詰まりそうになった。
 クールな会長、と日下達が言っている意味を、ようやく体感したように思えた。



 初めてだったんだ、と神に相談したあの日。


 ―――恋する男に余裕なんて無いんですよ、伊織さん


 神は、そう言った。



 あの時の状況と似ているはずなのに、全く違っている。
 転生の秘密と天秤にかけてしまえば、身体を明け渡す事ぐらい軽いものだ。そう割り切っていたし、最初は嫌悪感を感じていた。それなのに、その内快感を感じていました、なんて、斯波の言う通り淫乱以外の何者でもない。

 端から見れば『前のが演技で騙していた』そう思われても不思議はなかった。


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