部室と薫3



 じっと薫が俺を見つめていた。

 こうやって見つめてくる時は、薫が俺に何か言いたい事がある時だ。
 いつもは部屋や教室で話すことが多いせいか、部室だと妙に落ち着かない気分になる。


「入るのか?」

「……多分、無理だと思う」

「そうか」


 薫の視線がふっと下がる。
 残念そうなその顔に、申し訳ない気分がこみ上げてくる。
 ここまで御膳立てしてくれたのに、答えは最初から決まっていた。やれないんだったら、最初から断るべきだったのに。

 優柔不断な自分に嫌気がさす。


「研究か?」

「……あ、ああ」

「この学校の部活参加は強制じゃない。勉強や家の都合で、部活に真剣に打ち込める生徒は部員の半分。後の半分はオールコートの時に、身体を動かしにきたり、ゲームをしにくる程度だ。伊織が研究忙しいのは知っているが、籍をいれていれば、時間がある時にバスケが出来る、と思う」


 真剣に打ち込みたい生徒の場と、バスケが好きでやりたい生徒の場の両方が提供されていて、自分の生活に無理なく適応させられる。
 聞けば聞くほど、良い条件だった。


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