部室と薫2
「えーっと、細かいことは一応この中に書いてあるかな。なんか聞きたいことあれば、なんでも答えるよ?」
「はい。ありがとうございます」
「なんかある?」
「とりあえず、今の所は大丈夫です」
「そっか」
練習の時間を割いてまで付き合ってくれている事を考えると、段々申し訳なくなってくる。
「すみません、練習中に」
「別にいいよぉ〜。どーせ、仕事終わったから暇だし」
そこで会話が途切れ、初対面ならではの微妙な空気が流れた。
ここに伊吹がいれば上手く繋ぐのだろうが、口下手で人見知りな俺が、初対面の場を繋ぐのは中々難しい。
これが研究会とか、勉強会になれば話は別だが、プライベートの場だと途端に何を話していいか分からなくなる。
「滝川、ここは俺に任せてくれないか?」
どうしようかと逡巡していると、今まで黙っていた薫が口を開いた。
「そういえば、水無瀬の同室なんだっけ?」
「そうだ」
「そっか、なら知り合いの方が色々と聞きやすいだろうし、お任せしちゃおうかな」
「ああ」
「多分無いと思うけど、なんか分からない事あったら電話して」
分かった、と薫が頷いた。
「じゃあね、同室君。君が入ってくれたら、イケメンが増えて僕嬉しいな!」
「色々ありがとうございました」
滝川が出ていって、部室には俺と薫だけになった。