部室と薫
「確か説明の紙がどっかにあったと思うんだが」
小黒が逡巡して、一番端のロッカーを漁りはじめる。部活用のロッカーなのか、下の方には大量のタオルが積み上げてあり、上には書類がところ狭しと並んでいた。
「あ、監督! 探したんですよ!」
部室の扉が開き、制服を着た小柄な男子生徒と薫が入ってくる。
「おお、滝川に水無瀬か。丁度いいところに来てくれた。入部希望らしいから、細かい説明をしてもらってもいいか?」
「はーい、そのつもりです。ロッカーの鍵、監督が持ってるみたいだったから、ずっと探してたんですよー」
監督が滝川にクリアファイルを渡す。滝川と呼ばれた男子生徒は間延びしたような話し方をするが、不思議と嫌味な感じはなかった。
「それはすまん。終わったらいつもの所に戻しといてくれ」
「了解でーす」
滝川が笑顔で監督を見送った。
「さてと。入部希望だったよね?」
「はい……一応」
「ちょっと待ってね。確かねーこの辺に…」
青いクリアファイルをパラパラめくり、「これだこれだ」と冊子を渡された。