バスケ部6
頭の中で、試合開始のブザーが鳴った。
ドリブルして踏み出す。鷲田がスティールしようと手を伸ばしてきた。
それを身体を一回転させる、バックロールターンでなんとか交わす。
すぐに2人に囲まれるが、体制を極限まで低くし、フェイントをかけようと左に踏み込んだ。
その時。
ピッピー!と鳴った笛の音に、前に居た選手同様、弾かれたように音の方向を見た。
「お前ら何してる!」
「「「監督(おぐっち)!」」」
レギュラーの3人の焦った監督を呼ぶ声。
俺は監督と呼ばれた、笛の主を見て、思わず固まった。
小黒?
長身でがっしりした身体付きだが、わずかに膨らんだビール腹。
隆二に比べると幾分か老けた印象は、白髪まじりの髪と少し薄くなった前髪が原因だろう。むしろ、この年齢の取り方が普通で、隆二が若すぎるのかもしれない。
小黒は歳を重ねているが、昔の面影はそのまんまだった。
鷲田のおぐっち、という愛称もあって、小黒だと確信する。
かつての高校バスケの同期がそこに居た。