バスケ部2
「文化祭の時はすごかったな! 2日間で俺らのマークを抜けたのは、3人しかいなかったんだぜ?」
丁度、休憩のグループに入ったんだろう。タオルを髪に被せ、スポーツドリンク片手に、そいつが近寄ってくる。
「実はあの後、監督にはこってり絞られちゃってよー」と、笑いながらそいつが言った。
ユニフォームには、10番WASHIDAと書かれていた。ズボンには鷲田と刺繍がしてあって、珍しい名前だなと思う。
「お前、どっかでバスケやってたの?」
「やっていたというか、アメリカで良く見てたんだ」
これは本当だった。大学の校内にも、バスケットリングはあったし、家の庭や通りでやっているやつも少なくない。
“それをすれ違い様に見ていた”という、レベルにすぎないが。
「そっか! お前帰国子女だったっけ?」
「え、なんで俺の事?」
「なんで、も何も。一時すげー噂になってたぜー? 天才双子の編入生が来るってなー」
「……」
ガシガシと鷲田が、タオルで髪の汗を拭っていた。
「やー、でも実物ほんとイケメンだなー。容姿は英国の王子様的な? しかも、頭も良くって、運動神経も良いんだろー? 神様って、二物も三物も与えちまうなんて不公平だよなー」
「そんな事……」
続けざまにくる褒め言葉になんて対処して良いか分からずにいると、もう一人休憩中の部員が寄って来た。
「あっ、お前か! わっしーとかミナっちゃんを抜いたって言う編入生!」
「え、そいつ!?」
「ちっちぇーじゃん!」
周りで休憩していた生徒達が、物珍しさに寄ってくる。
確かに、水無瀬の時の俺に比べたら小さいが、周りの部員達はどの部員も185は超えているじゃないかという位、背の高い部員が多かった。