分かりきった答え2
「なんや珍しい事もあるもんやな。分からん問題でもあったん?」
そう言われて指差された先は、計算式の途中で止まっていたシャーペンと問題。応用問題の8番ですっかり式は途切れていた。
「あ、ああ。引っかけに引っかかって」
「確かに。8の引っかけは、ほーんま鬱陶しかったわ。そこだけ嫌にいけずな問題やしな」
「そうだな」
苦笑しながら参考書にノートを挿んで閉じた。ちょうど担任も戻ってきて、みんなわらわらと自分の席に散って行く。
これ以上リスクや、嘘に嘘を重ね、更には罪を重ねる事を、俺は耐えられるんだろうか。
きっとこの調子だと無理だ。
周りは騙せても、些細な変化でさえ見逃さない伊吹を騙せるとは思えなかったし、騙したくもない。
今でさえ、生まれ変わりを隠していて。
それだけで裏切りにも等しい行為をしているというのに。
今の段階なら、もしこの話が伊吹に伝わったとしても「この前の文化祭は、まぐれだった。アレックスのマネをしたら出来た」と言って誤摩化せる範疇だろう。
見学に行って、断ろう。
バスケが出来る理由なんか、いくら探ったって見つかりはしないんだ。