迷子の産物


 桐生からのメールの返事もなく、悪化する迷子状況。


 辿り着いた先は誰もいない体育館だった。昨日の授業で使った体育館ではない、 第二体育館と書かれたそこは、集会とかに使いそうな一般的なステージ付きの体育館とはまるで違う。
 ステージこそはないが、広さで言ったら3倍位あるんじゃないだろうか。バスケのコートが、7面もある。


 これだけあったら、女バスとコートの取り合いなんかにもならないよな。


 広いコートに年甲斐もなく、ワクワクして、一瞬で現実に戻る。


 この学校は女子が居ないから、そんな心配も不要か。


 何となく体育館を歩いていると、端っこの方に片付け忘れたのか、バスケットボールを見つけた。
 この身体になってから、バスケなんて、アメリカでやった遊び位しかない。 その時は周りに初心者だと言ってたし、伊吹もいたから、パスくらいしかしてないのだ。

 誰も居ない今、そんな事を心配する必要もない。




 身体がうずうずして、気づいたらボールを持ってゴールまで走り出していた。




 ボールが手に吸い付く感覚、床に跳ね返る音。
 ゴール前でのステップ。
 ボールを投げる瞬間、一瞬空を飛んだようなあの感覚。


 そのまま、アンダーハンドでレイアップシュートを決める。


「……入った」


 感覚は全部覚えてる。


 今度はボールをドリブルしながら、スリーポイントラインに足を揃えて立つ。
 
 ポイントガードだった俺は、チームの得点王だった。
 前と右サイドからのスリーポイントは外さない自信がある。左サイドは、8割。



 しかし、見事なエアボールに俺は愕然とした。



 投げたボールは孤を描いて、ゴールリングに届く事無く、手前に落ちた。


←Top[0]
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -