見えぬ男の影2 (side:ibuki)


(side:Ibuki)



 りゅうじ。


 その名前に思い当たる人物はいない。
 理事長の名前も隆二さんだけど2人は初対面だし、織の同室者に当たる人も違うし、アメリカの時もそんな名前の人はいなかった。リュックやリュークなら、他学部にいた記憶はある。


 じゃあ、誰?
 僕の知らない人?
 でも、どこで知り合った?


 疑問ばかりが頭の中をぐるぐると蹂躙する。
 織の知り合いで僕が知らない人なんてほとんどいない。
 今までずっと一緒にいたんだ。織が夢で名前で呼ぶ人物ともなれば、相手をよく知らなくとも、顔と名前位は知ってる。


 じゃあ、誰?


 最悪な予想が思い浮かぶ。


「……セフレ?」
 織が夜に部屋を抜け出して、真夜中の街に繰り出していたら?



 考えれば考える程、腹の底から沸き上がる黒い感情。

 僕の知らない所で、織はそんなことをやっていた?

 でも、織に限ってそんなことはない。と自分に言い聞かせて、必死に首を振った。

 

 織がずっと僕に隠している隠し事がこれだったら?

 次々と思い浮かぶ悪い想像に目を伏せ、織の身体の後処理をした。







 次の朝、疑心を抱えながら織の元に向かうと、いつもとは違うはにかみ顔で少し恥ずかしそうな織が出迎えてくれたんだ。
 ああ、やっぱり考えすぎだった。
 そう思えたのに。
 その時は、ただの悪い想像だった、と割り切っていられたのに。




 薫という同室者と馴染んだ雰囲気を見るまでは。




 昨日より明らかに軟化した雰囲気を感じた途端、悪い想像が現実のように思えて仕方がなかった。
 溜め込んだ想いの捌け口は留まる事を知らなかった。


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