* 仁王 *
甘ったるい匂いがすると思ったら、隣でロリポップをくわえている奴がいた。
「お前さんよう学校でそんなもん食べようと思ったな」
声をかければ口からロリポップが引き抜かれる。それを名残惜しむかのように、ほんのわずか舌がロリポップを追いかけたのが見えた。
「食べたくなったから」
なんとなく見たらいけんもんを見た気がして、視線をはずした。
「せめて昼休みにすればよか」
「今食べたかったの」
そう言うと、テカテカとした透明感のある赤と橙のロリポップをまたくわえた。
口の中に入れておくのは大きすぎるのか、時たま頬に押しやってはいるが、やはり大きすぎるのかすぐに引っ込む。
「リスみたいじゃな」
声をかければまた名残惜しむ舌を残してロリポップが口から離れる。
「そんなかわいいもんでもないよ」
にやりと笑ってロリポップを含むと、そのまま音をたてて噛み砕いてしまった。
「これを咥え続けられるような女子の方がかわいいんだろうね」
そう言いながら口から出てきた棒は、無惨にも先端が噛み潰されていた。
(ロリポップって書きたかっただけ)