灰色の髪の青年、リッカが横になっていた部屋に寝具があった。これで局部を隠しながら性行為の真似をすることになった。とはいえ、シオンは経験がない。リッカも詳しいことはよく分からないようだった。
 とりあえず裸になって布にくるまった。裸の胸と胸が密着する。
 シオンとリッカは四苦八苦しながら何とかそれらしき格好になるが、どう見えているのかは分からない。触れた肌の温かさ、見上げた先の綺麗な顔に、なぜだかシオンの胸が高鳴る。でも、それが何なのかも分からない。

「そうだ、僕が四つん這いになるから後ろから覆いかぶさってほしい」
「ええっ!?」
「それで前後に何回か動いてもらったら、その、それっぽく見えるんじゃないかな……」

 頬を真っ赤にして恥ずかしそうにリッカが言った。シオンの頬も赤く染まる。お互いにもじもじとしながら、天井の機械を見て……やってみることになった。
 リッカは年上だが、身体はシオンより小柄だ。すっぽりと腕の中に納まってしまう。女の子みたいな顔をしているお兄さんが、恥じらいながら裸で四つん這いになっている。リッカなりに協力しようとしているのだろうか、腰を動かしてぐいぐいと押しつけてくる。男にしては柔らかくて白いお尻がシオンの性器に強くこすりつけられる。

「あ、あの、俺が動きますから!」

 そう耳元で言って、シオンはリッカの腰を掴んだ。ぷる、とお尻の肉が揺れる。谷間にごしごしと性器をこすりつける。前後に動くたびにリッカのお尻の間に透明の液体がたっぷりついて、いやらしく光る。揺するたびに、いつのまにか勃ちあがったリッカの性器が床に汁をまき散らす。たまらなかった。

「はぁ、はぁっ、り、リッカさん……!」

 名前を呼ぶと、リッカは恥ずかしいのかうつむいてしまう。長めの灰色の髪の毛で顔が全く見えない。でも……かわいい。シオンは同性に対して初めてそんなことを思った。
 ふと、リッカが女の子だったらどうするだろうと考えた。したことがないからよく分からないが、お尻に穴があってそこに入れるという知識はある。性器をリッカのお尻にこすりつけながら、探る。排泄をするための小さな穴がある。でもさすがにそこには入らないだろう。でも、どうしても何かに性器を挿入したい。シオンは考えて考えて……リッカの太ももに性器を挟んだ。

「あっ、ああっ、な、なんでそんな所……」
「こうした方が、本当に交尾してるみたいに見えますから!」

 リッカの口を塞ぐようにして覆った。垂れるよだれ。手のひらにリッカの熱い舌が触れる。我慢できなかった。
 シオンはよく分からない。本能で太ももに挟んだ性器とリッカの性器をまとめて、がむしゃらに扱く。

「あっ、あっ、あああ! だめっ、シオンくん、こんなのだめえっ!」
「は、はーっ、はーっ、リッカさんっ、リッカさんっ……!」

 今日初めて会ったばかりの年上。ついさっきまで理知的な話し方をしていた優しいお兄さんの太ももに性器を挟んで、交尾の真似をしている。ぞくぞくとした。シオンは後ろから耳を甘く噛んだ。

「あっ、あっ、みみ、だめ……でちゃう……!」
「耳弱いんだ……かわいい……俺も、でる」

 思った事を口に出した。可愛いと一度口にしてしまったら止まらなくなった。可愛い、リッカさん可愛い。可愛い。そう言いながらリッカの性器を扱くと、あっという間に射精してしまった。シオンもほどなく射精して床に精液の水たまりを作る。お互いの精液が混ざって、寝具がびちゃびちゃに濡れた。

「ほ、ほんとのエッチみたいだったね…………あの、明日もしてみようか…………」

 真っ赤な顔をして、リッカが照れくさそうに笑った。笑うと少しだけ幼く見える。可愛い、シオンはそう言って抱きしめたくなった。思わずリッカの肩をつかんで……自分の置かれている境遇を思い出した。


 謎の宇宙人に捕まったもの同士。同性で、今日初めて会ったばっかり。交尾の真似をしていたら出られるかもしれないから、やっているだけ。それだけ。

 
 それだけのはずなのに。風に揺れる灰色の髪の毛が、笑うと少しだけ幼く見える顔が、優しくて頼れる年上なのに意外と恥ずかしがりやな所が。
 どうして可愛く見えるんだろう。どうしてもっといろいろなことを話してみたくなるんだろう。ここにいる前はどこでどうやって暮らしていたのかとか、好きな食べ物だとか、どうしてそんなどうでもいい事が気になるんだろう。

 シオンには全然分からなかった。
 その気持ちをシオンが知るのはまだまだ先の話で……その時には、もうリッカはいなくなっていて、二度と会うことはできないなんて。
 もちろん、今のシオンは何も知らない。

 ただ、今は鉄格子ごしに差し込む光がまぶしかった。檻を構成する石灰に含まれる、金属質の結晶がきらきらと光っていた。その陽の光ごしに見たリッカが、はにかむように笑う顔。
 何でもない風景だ。それなのにシオンはいつまでも覚えている。ずっと。季節が幾度も変わって、家族が増えて、リッカより年上になってしまっても、ずっと。
 


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