お酒で真っ赤になった頬、今にも泣きだしそうな、いつもより幼く見える顔。額に乱れたワイン色の髪の毛がくっついていた。それを何となく見ていると、不意に勇人からキスされた。
 柔らかな唇が触れる。ぬる、と舌が入ってくる。薫の身体が玄関のドアに押し付けられて、抱きしめられた。ぐいぐいと局部を押しつけられる。なぜそうなっているのかは分からないが、スキニーデニムの前を性器が窮屈そうに押し上げている。大きく膨らんだそれを、強くこすりつけられる。腰が、くいくいと誘うように揺れていた。 
 薫は全くそういうつもりではなく、ただの親切心から送り届けただけだったが……こんな誘われ方をしてはたまらない。据え膳食わぬは男の恥というもの。
 貪るようにキスをしながら、薫は誘いに乗ることにした。玄関で立ったまま、勇人の身体をまさぐる。シャツの上から乳首を触ると、もうぷっくりと膨らんでいた。ぎゅっ、とつねる。両手の指でつまんで、コリコリとねじる。クリクリとひねる。つかむ。爪を立てる。
 ぷは、と勇人が唇を離した。その途端、唾液と一緒に漏れる喘ぎ声。

「アッ、あっ、あふ、んぁ……あっ、だめ、乳首でイクっ……!」
「乳首だけで? もっと気持ちいい所があるのに?」

 薫が微笑みながら耳元で囁く。もっと気持ちいい所……勇人はこの前の情事を思い出す。自然に、薫の性器をスラックスの上から撫でまわした。さわ、さわ、とおねだりするように。
 それを咎めるようにして、薫は勇人の下着の中に手を入れて、体内にそっと指をつっこんだ。

「あっ、あっ、っあ、ああっ! あああああっ!」
「こーら、声が大きい。外に聞こえちゃうよ」

 隣の人や宅配の人が通ったらどうしよう。そう思うだけで勇人は体内に挿入された薫の指を締め付けてしまう。きゅんきゅんっ、と動いて奥へ指を飲み込もうとするひだひだ。耳たぶを甘く噛みながら囁かれる言葉。

「勇人はホストでヤリチンなのに、玄関で立ったまま男を誘って咥えこむビッチですって、近所の人に教えてみる?」
「あっ、あ、や、やだっ……! あっ、ああ! ん、んんーっ!」

 想像したらぞくぞくした。そんな勇人のナカを容赦なく薫は弄る。前立腺をこりこりとこすられて、つつかれて、とんとんと押されると……勇人は声が止まらなくなる。指でナカをいじめられながら、キスされて、乳首を優しくひっかかれる。

「あっ、あっ、んあっ、あっ、イクッ、イクッ! んあぁああっ、指ちんぽでイカされちゃうぅうう!」

 隣に聞こえんばかりの大声だった。薫はとっさにキスで口を塞いだ。勇人は足をがくがくとさせながら薫にもたれかかる。
 キスで塞がれた口からはくぐもった喘ぎ声しか漏れなかった。しかし勇人は心の中でありとあらゆる淫語を叫んでいる。唇も、乳首も、お尻も、おなかのコリコリも、全部気持ちいいっ! イク、イクイク、イッちゃう!
 薫の服を強い力でつかみながら絶頂した。薫はデニム越しに勇人の性器を触る……が、しっとりとはしているものの特に何か出ている感じはなかった。しかし、お尻にいれっぱなしの指はひくひくと断続的に締めつけられ、ナカが小刻みにけいれんしている。

「キスと乳首と指だけで、メスイキしちゃったね……」
「あっ、は、はぁ、はあ……し、仕方がないだろ! 後ろが気持ちいいから後ろばっかりやってたら、前でイケなくなったの!」

 勇人はイッたばかりなのに頬を膨らませて抗議した。実質指だけで、しかも女の子のイキ方……可愛いと思う気持ちと心配な気持ちが綯交(ないま)ぜになる。少しだけ心配な気持ちが勝った。


「ねえ、大丈夫? 将来的に大変な事になるんじゃ……」
「俺の身体をこんな風にしたの、あんただろっ! 責任とって!」
「責任、責任か……いいよ。勇人が男の子イキできるように、今日は朝まで練習しようか」


 薫の女性的な顔に、野性味を帯びた微笑みが浮かぶ。勇人はハッと口を押さえるが、今のなしとはいかなかった。あれよあれよという間にお風呂に連れ込まれて、シャワーで綺麗に身体を洗われて、勇人は髪の毛をドライヤーでふわふわに乾かされてしまう。気が付けば前開きのパジャマを着て、ベッドに座らされていた。



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