短編 | ナノ

たとえば、彼女の肩で眠ること


(大学生設定)






ふとした瞬間に、なんとも言えない暖かさを感じる時がある。
それはじんわりと僕の胸を侵食していき、いずれはきっと山田でいっぱいになるだろう。
山田と付き合ってから僕は、幸せは辛さと紙一重なんじゃないかと思うようになった。嫉妬して、喧嘩をして辛くて泣いたり。甘えて、暖かい気分になったり。

嬉しくて、辛くて、苦しくて、愛おしくて、ぐちゃぐちゃになる。
そんな気持ちをどうしたら良いかわからなくて、僕は隣で座ってテレビを見ている山田の肩に頭を乗せた。

「?」

「…ちょっとだけ。」

どうしたの?と言いたげな視線が僕を見てくる。
それに少し笑って山田の肩に擦り寄った。

高校時代、僕に居場所をくれた友人達は今色々な所で活躍をしている。
その1人が今、テレビの中でアウトをとり、嬉しそうに笑っている。
それを観て山田はふふっ、と笑った。

「沢村くん相変わらずだね」

そうだね、と言って山田の手に自分の手を絡める。

「……はなこ、」

「……暁くん」

目が合って、テレビの音も、水道から滴る水が落ちる音も、心臓の、音も全部が消えて僕ら2人だけ。

唇が触れて、はなこが僕のおでこに自分のおでこをくっ付けて好き、と言った。
それが幸せで、全部が幸せで、泣きたくなる。

「っ、」

涙が出そうになるのを堪えて、

「僕は、幸せだよ」

そう言うと
今度ははなこが僕の肩に頭を乗せて笑う。

「私も、幸せ」

じんわりと暖かくなって、僕ははなこの頭の上に頭を乗せて、そっと目を閉じた。







(幸せすぎて、)
(涙が出そうなんて、)






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