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「あの……ちょっと待って、えっと……あの……」
「さっき訓練終わったの見てたぜ。防衛任務もシフト見て今日はないって確認した」
「うん……?」
「他になんか用事あるなら、別の日とかでも、待つから」
ここまでの会話で私はひとつ気づいたことがある。
これはそもそも断らせる気がないのでは?ガンガン来る当真に正直どうしていいか分からない。私があんなにグチグチ考えて頑張って避けてきたあの日々はどこに行った。何となく腕を掴む力も強くなってる気がする。逃げられる気がひとつもしない。
「ちょっと待って……当真……」
「待たねぇよ」
「なんで?そんな、いきなり」
「いきなり?これでもオレ、だいぶ待ったと思うけどなぁ」
そう言うと当真はぐいっと私を引き寄せた。気がつけば腰に手が回っていてビクともしない。本当にちょっと待って欲しい。当真との距離が恐ろしく近い。展開が急すぎて思考回路はショート寸前だし、当真の顔が近すぎて心臓が破裂する勢いでバクバクと脈打つ。顔から火が出そうなくらい熱いし、なんかもう死にそうだ。
「オレのこと避けてたろ」
「それは、その……あの……色々あって……」
「色々って何だよ。男でも出来た?」
「いや、ちがう……けど……あの……離れて……」
「離れたら逃げるだろ?」
お願いだから逃がして欲しい。そして誰かこの状況を説明して欲しい。
今にもキスしてしまいそうなこの距離で、そう、一応私は当真のことが好きなわけで。そんな相手に腰を抱かれて平気な18歳がいたら教えて欲しい。それはそれでかなり経験豊富だろうけど、私はそうじゃない。訳が分からなさすぎて泣きそうだ。こんな風に抱き寄せられたって嬉しくない。いやそりゃ、本音は嬉しいけど。
「で?」
「……はい?」
「メシ」
「行くよ……行くしかないんでしょ……?」
私は泣く泣くOKの返事をした。これはもう脅迫だと思うのだが生憎と助けてくれる人は近くにおらず、そのままずるずると当真に引きずられて食事に向かう。心做しかOKしてから当真の機嫌がいい。
ボーダーの食堂では落ち着いて話が出来ないからと、まさか当真の家に連れていかれるなんて想像出来るわけが無いじゃないか。
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NO.1狙撃手は誰にも止められない……!
長篇の方がかなりゴタゴタしそうなので息抜き連載な感じはあります。
最初は切ないすれ違いの予定だったのにナァ……
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