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一体全体これはどういう状況なんだろう。
あれから連れてこられたのはまさかの当真の家だった。どうやらボーダーの仕事で安定した収入を得られているからか一人暮らしらしい。家事とかも自分でやってるのかな。だとしたらえらいなぁ。あと意外と部屋が綺麗だった。エロ本とかその辺にころがってると思ったのに、ちゃんと本棚に入ってる。いや、せめて隠せよ。めちゃくちゃ気まずいわ。
てか普通に仲良かった頃でさえ家とか行ったこと無かったのに。サラッときてしまって凄くなんか、複雑。

ただでさえ展開が早すぎて訳が分からないのに、目の前のテーブルには美味しそうな出来たてのナポリタンとにこにこと嬉しそうに笑う当真。あらやだ料理男子素敵。違う。ほんと私なんでここにいるんだろう。

「食わねぇの?」

「……食べる。いただきます」

「ドーゾ」と当真特性のナポリタンをフォークで巻いて口に運ぶ。美味しい。程よい茹で加減のパスタとこんがり焼けたベーコン。少し甘めの味付けが私好みのとても美味しいナポリタンだ。当真って料理上手なんだなあ、さすがNo.1狙撃手。いや狙撃手全く関係ないけど。
もぐもぐと食べ進める私に相変わらず緩んだ目元を向けながら、当真は一旦自分の食べる手を止めて問いかけた。

「うまい?」

「むぐ……ん、正直めっちゃ美味しくてビックリしてる」

「まぁオレが作ってっからな」

やっぱりNo.1にもなると料理のスキルも上がるのかなあ……太刀川さんとか料理出来なさそうだけどなあ……。褒められて嬉しそうな当真に「そうだね」と返事をしてフォークにくるくるとパスタを巻いていく。そういえば当真と食事するのはいつぶりだろう、少なくとも数ヶ月ぶりであることは間違いない。
少しづつ当真と距離を置いて、完全に避けるようになってからは1年近くたっているのだから、前と変わらず私に接してくる当真が何を考えているのか全く分からない。
数ヶ月の隔たりを全く感じさせない当真の態度に居た堪れなくなって思わず疑問が口から零れた。

「なんでさぁ」

「んー?」

「なんで、当真はさ、怒んないの」

「ははっ、なんでオレが怒るんだよ」

「一方的に避けたじゃん。私」

目も合わせずにそういう私に、当真の声は穏やかなままだった。笑い声も、話し方も、前とおんなじ優しい当真。
なんだか胸がギュッとなって苦しい。私が沢山悩んできたことがまるでなかったかのような今の時間も、本当は少し悔しかった。避けた、という言葉にちらりと見た当真は少しだけ悲しそうな顔をする。

「やっぱオレ、避けられてたんだよなー……」

「うん……」

私が頷くと当真は首の後ろに手を当てて「んー……」と唸る。流石にあれだけあからさまに避けてたし、気づかないわけないか。さっきまで楽しそうに笑っていた当真の顔はすっかり眉尻が下がってしまっている。
当然だろう、ボーダーに入隊してからはほぼ毎日、本部でも学校でも仲良くしていた相手がいきなりパタリと近寄ってこなくなったのだ。きっと悩みもしたし傷ついた、だろう。
申し訳なくて何も言えずにいると当真はぽつぽつと話し始めた。

「初めはさ、オレがなんかしたんじゃねぇ?ってすっげぇ悩んだ」

「でも、いくら考えても思い当たんねーの」

「彼氏でもできたんじゃねーかって、けどさっき違うって言われたし」

「すっげぇ考えた、最初はムカついたりもした」

「でも怒るとかよりもっと、時間経つほど話してぇなぁって思うわけ」

「もうオレさ、物足りねーの」

「お前がいねぇと」当真はそう言うと、また目元を弛めて、血が滲むほど噛み締められた私の唇をテーブル越しに指先で撫でた。

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『ブーゲンビリアは枯れない』の当真さんはあっまあまで息をするように好き好きするし基本的にヒロインちゃん至上主義というか、当真→→→→→→→→→→→→→←←←←ヒロインぐらいだと。重いな……?


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