小話
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「おっくむら君」
「よぉ志摩、どうしたんだよ」
「奥村センセ知らん?」
「雪男?さっきまで俺の手作り弁当を一緒にあーんしたりしながら仲良く食べてたけどな」
「そーか。どこ行かはったんやろな。授業でわからないとこは何でも聞いて下さい、手取り足取り優しく教えてあげますよって云われたんやけどなぁ」
「暑い中急に勉強なんかして頭がおかしくなったんじゃないのか。幻聴が聞こえたら病院に行くべきだぞ」
「いやー俺が愛しの奥村センセの言葉聞き間違えるはずがあらへんやろ」
「志摩は妄想が得意だからな」
「兎に角見つけたら、貴方の志摩が探してましたって伝えてぇや」
「俺の雪男にピンクの虫嫌いの戯れ言を聞かせるのは気が進まねぇな」
「はは、奥村君口が悪いんやから。紳士な俺や奥村センセとは大違いや」
「あいつも俺の前だと結構口悪いぞ。まぁ知らないだろうけどなぁ」
「アハハくたばれくされ兄」
「ヘヘヘッお前がくたばれくそピンク」
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燐VS志摩
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「おはよう兄さん」
「おはようゆっきー。朝飯出来てるぞ」
「うん。有り難う。今日はトースト?珍しいね。て、ゆっきーってなに」
「気にするな。しえみからイチゴもらってジャムにしたからさ」
「え、ジャムって作れるの?」
「ん?結構簡単だぞ」
「へぇ。凄いね。どれどれ…あ、美味しい」
「だろ。甘味抑えたから、雪男でも食べやすいだろ?」
「僕用にしてくれたの?」
「ああ。どうせならお前の口に合う方がいいしな」
「…わー。何か…僕メチャクチャ愛されてる?」
「んな大袈裟な。お前甘いものあんまり食べないから、少しでも食べやすいようにな。あと、最近疲れてるみたいだしビタミンの補給になればと」
「…究極の愛?」
「愛も何も、飯作る立場としてそんぐらい考えてるわ」
「そ、そうなの?」
「昨日の豚肉とオクラの炒めたヤツも、ビタミンB1が沢山入ってる。ちなみに疲労回復の為にな。最近玄米ご飯にしてるのもその為だ」
「…全然知らなかった…」
「そのグレープフルーツジュースも手作りだからな。食欲増進に」
「……」
「な、なんだよ急に立ち上がって…わぁっ!何だ!?」
「兄さん、新婚旅行は何処が良い?」
「………はい?」
「やっぱりグアムとかハワイ?ああ、パリなんかも良いかもしれないね」
「……もしもーし」
「ファーストクラスのチケットと、スイートルームを用意するよ。何時も頑張ってくれる奥様の為に!」
「あの〜…雪男さん…?」
「そうと決まったら早速旅行会社に!!あ、何なら挙式も南の島でやろうか?海を見ながら永遠の愛を誓い合うんだ。素敵じゃない?」
「素敵なのはお前の頭の中だ。冷めないうちにさっさと食え」
「いたっ!…もう…照れ屋さんなんだから」
「やっぱりお前夏バテしてんだよ。脳みその中が。兄ちゃんが栄養のあるもの一杯作ってやるからな〜」
「とりあえず、航空会社に…ぶつぶつ…」
「…………そろそろ真面目に怒るぞ。パンが冷えるだろ」
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ファーストクラスのチケットは笑えるほど高額らしい。雪男財閥万歳
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銃を構える雪男が好きだ
強い眼差しで相手を捉え、なんの躊躇いもなく射抜く
その横顔を、純粋に美しいと思う
其処でもたらされるのが死のみだとしても。真っ黒い銃口が瞬時に命をさらうのだとしても
「終わりですよ」
バンッ。
変わらぬ音。硝煙の匂い。そして静寂。
「終わったよ兄さん」
振り向く雪男は笑っている。夕食が出来たと告げた時に見せる笑顔と、全く同じように
怖くないのかと尋ねた事がある。雪男はよくわからないと云った。ただ、失うのはとても怖いよと笑って俺を抱き締めた
もし、俺が悪魔に支配されるのなら、失う前に殺して欲しいと思う。
美しいガラス玉のような眼に最期を写して、優しい指先で永遠にして欲しい
そして、さよなら雪男と腕の中で答えてやるから、お前も笑ってキスをしてくれればいいさ
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特に意味はない
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「じゃあ、カードで」
「かしこまりました。お支払回数は」
「一回で」
「はい。お預かりいたします」
「雪男、さっきの何だ?」
「何だって?」
「カードとか一回とか」
「ああ、クレジットカードのこと?」
「くれじっとかーど?」
「うん。祓魔師に支給されてるカード。お金の代わり」
「代わり?」
「あれを使うと、現金を持たなくても買い物が出来るんだ。で、後日僕の口座からお金が引き落とされる」
「口座…」
「貯金箱みたいなもんだよ」
「ふぅん…。あのカードって俺でも持てるのか?」
「未成年は基本的には無理だ。僕のは祓魔師用の特別な物だし、そもそも兄さん口座持ってないだろ?」
「持ってない」
「じゃあダメだ。それに兄さんにあんな物持たせたら何をするか…」
「あれってどんな物でも買えるのか?」
「限度額はあるけどね」
「いくら?」
「100万だったかな」
「ひ、100万!?すげー!!何でも買えるな!」
「だから、後日口座から落ちるんだって。何でもは買えないよ」
「でも、おやつとアイス位なら沢山買える!」
「買わないよ」
「夢の無い弟だな」
「夢ばかりの兄だな」
「うっ…夢くらい良いじゃねぇか!」
「夢は夢のままで頼むよ」
「ふんっ。でも、さっきのいいな」
「ん?何が?」
「さっとカード出して、一回で。って云ってみたい。何かカッコいいじゃん?」
「沢山勉強して、将来一杯稼いで来るようになったら作れば良いよ。だから今は勉強しないと」
「うっ。結局そこか」
「結局そこだ」
「でもさ」
「ん?」
「俺の将来の夢は雪男のお嫁さんになって養ってもらうことなんだけど」
「うっ。そう来るか…」
「毎日エプロン着て、雪男ー。おかえりーってお出迎えして」
「ぐっ…」
「ご飯?お風呂?それとも俺?とか」
「っ…」
「ああ、一緒にご飯あーんしてお風呂でちゃぷちゃぷした後に、ベッドでぬくぬくも良いな」
「こ、小悪魔め…」
「朝飯はご飯と出汁巻き卵と鮭、海苔と味噌汁の和食でいってらっしゃいっのちゅう」
「……っ、分かったよ!カード使えよ!一回で。ってやって来なよ!ほら!」
「わーい!雪男大好き!」
「奥村燐ってちゃんと書くんだよ!」
「はーい。名字が同じだから結婚しても便利だなー」
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勝者・奥村燐(嫁)
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「風がすごいな…」
「台風の影響だろうね」
「崩れねぇか?ここ」
「建物が大きいから流石に大丈夫だよ多分」
「でも窓割れそう…停電とかしねぇ?」
「可能性はあるな〜。あ、倉庫に蝋燭あったから持って来るよ」
「ちょ、ちょい待て。俺も行く」
「大丈夫だよ、すぐ戻るから」
「いや、何かあったら…大変だし…」
「何かって?」
「あの、あれだよ、雪男の眼鏡が割れたり…とか…」
「無いと思うけど。もしかして一人じゃ不安?」
「ち、ちちち違う!兄ちゃんはお前を心配してだなぁ…」
「そう。じゃあ一緒にいこうか。僕も1人だと怖いし」
「そ、そうだよな!大丈夫だ、兄ちゃんがいてやるからな!」
「頼りにしてるよ。さ、行こう」
「ぉ、おぅ。あ、雪男、あのさ」
「ん?」
「あの…その…だな…えっと…」
「ああ、折角だから手繋ごうか。はい、兄さん」
「え…な、なんで…」
「どしたの?繋ぐのイヤ?」
「し、しょーがない甘えんぼだな!ほら!ぎゅっ」
「に、兄さん、ち
ょっと…痛い…かな…」
「あっ、わりぃ!ごめんな!」
「もう、甘えんぼだなぁ兄さんは」
「そ、そんなんじゃない!」
「ふふ、さっきのお返しだよ」
「雪男の意地悪っ…」
「愛情表現だよ。とにかく行こうか。まさかそんなに簡単には停電はしないと思うけど…。兄さん、おいで」
「う、ガキ扱いされてる気が…」
「手、離さないようにね。ぎゅってしとくんだよ」
「分かってらぁっ。…ぎゅ」
「素直で良い子。良くできました」
「ガキじゃねぇっ…むぎゅ」
「台風も悪くないな…(ぽそ)」
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燐ちゃんは恐がりだといいな
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「もしもし、愛しの旦那様?」
「どうしたの愛しの奥様」
「良く俺って分かったな。大塚愛のお陰か?」
「奥村の愛のお陰だよ。で、どしたの?」
「雪男、夏と云えば何を想像する?」
「夏…兄さんの水着とか兄さんの浴衣とか兄さんの裸体とか」
「最後の一つについて簡潔に理由を説明せよ」
「兄さんが好きだから」
「うん。暑いからな。よしよし。帰ったら水浴びしような。主に頭を冷やすべきだ」
「裸体で水浴び?」
「まずは裸体から離れようか。で、他には何を想像するよ?」
「まぁ、祭りとか花火かな」
「悪くない。悪くないが、大事なことを忘れてないか?」
「ら」「裸体は置いてこい」
「仕方ないな〜。じゃあ、スイカとか?」
「そう、それだ。日本の夏にはスイカが重要だ。良く分かってるじゃないか」
「まぁ僕としてはスイカより裸体が」
「しつこい男は嫌われるぜ雪男」
「兄さんは僕を嫌いにならないだろ?」
「そうだけど、たまに嫌いになりそうになるぞ」
「え、マジで?どんな時?」
「洗濯物のたたみ方をググッてる時とか」
「…僕なりの努力だ」
「あまり知りたくはないが知ってる。で、さっきの話。裸体の話じゃないぞ」
「他になんか話したっけ?」
「ははっ、雪男はたまに馬鹿だな〜殺すぞ」
「兄さんと心中なら喜んで…じゃなくて、夏の話?」
「そうそう。ていうかスイカの話」
「ああそうだったね。スイカか。何か食べたくなったし、たまには買って帰ろうか?」
「さっすが雪男。偉人電電」
「……以心伝心?」
「そんな気がする」
「そんな気以外しないで。分かったよ、買って帰る。楽しみにしててね」
「やった!じゃあラムネ冷やしとくからな!美味しいヤツ頼むぞ!」
「了解。兄さんも裸体で待」「ブチッ…ツーツー」
「……なんかたかられた気がする…」
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スイカうまうま
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「ねぇ兄さん大好き」
「おー。俺も好きだから、洗濯物たたんで」
「…なんか適当じゃない?」
「ないない。あと、玄関の掃き掃除な」
「増えたし」
「兄ちゃんは忙しいんだ!それとも雪男、カッターシャツの糊付けと鯛の煮付けの仕込みとトイレの漂白と…あ、後制服のボタン付けるのもやるか?やってくれるんなら愛してるって200回でも云ってやるぞ」
「…ちょっとやり方ググッてみる」
「ググって雪男が理解する頃には、俺が全部終わらせてるわ」
「さり気なく馬鹿にした?」
「いや、堂々と馬鹿にした」
「何だこの敗北感…」
「敗北感じゃなくて敗北」
「とりあえず、ググる」
「ググらなくていいから洗濯物たたんでくれ」
「いやだから、たたみ方ググる」
「えっ、そこ!?そこから!?」
「インターネットは便利だね〜」
「兄ちゃん、少しだけお前を嫌いになりそうだ…にゃ〜…」
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家事ネタハマる。
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「なぁ奥村君、これ知っとる?」
「あん?何だこれ」
「ズバリ入浴剤や!最近女の子の間で密かに流行ってんの知らん?」
「知らん。何で流行ってんだ?」
「実はな、これを入れるとお湯が綺麗なピンク色になって花びらが浮かんでくるんや!」
「掃除大変だろ」
「うっわー主婦目線で即答…。何や、風呂掃除とかやってはんの?」
「俺がやらなきゃ誰がやるんだよ」
「奥村センセは?」
「雪男は仕事で忙しいからな。それに家事能力は皆無。寧ろマイナスだ」
「え、まじで?意外やな」
「米は石鹸で研ごうとするし、風呂の洗剤色々混ぜて有毒ガス出しかけるし、アイロンかけたら焦げるし、たまに巧くできても2時間かかるし、洗濯の仕方もイマイチ判ってないし…唯一出来るのが食器洗いだ。リンゴすら剥いたことがない」
「せ、洗濯機ってボタン一個やないん?」
「洗濯物の量に対して洗剤の量が判らないんだよ。柔軟剤も直接だばだば入れちまうしな」
「うわー…残念…何や、他のことは完璧なのになー…」
「というワケで家事は俺が担当だ」
「奥村君も大変やなぁ…」
「まぁでも、あいつはしっかり仕事して沢山稼いでくりゃ良いんだけどな。俺的に」
「え」
「あいつが任務や学業に集中出来るようにするのが俺の役目だから」
「えぇえっ…あ…そ、そうか…うん、良いと思うわ…うん…」
「じゃ、夕食の買い物があるから帰るわ。あと洗濯物も取り込まないといけないし」
「ぉ、おう。気を付けて…」
「ん。じゃーな志摩。あ、そういやぁ卵が安売りしてたな〜…そういや……あれが……(ブツブツ)」
「気を付けて〜…また明日なー…。……はぁ…。…どんな良妻賢母や…涙出るわ……」
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どうやったらこんな素敵な嫁さんが貰えるか教えて下さい by皆の人気者 志摩廉造
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「ほら雪男!うさぎさんだ!」
「おー見事なりんごうさぎ。流石兄さん」
「へへっ、だろ」
「食べるのが勿体無いね」
「また剥いてやるから早く食べろ」
「じゃあせめて写メを」
「その写メどうすんだ?」
「待ち受けにしようかな」
「ぶっ…」
「何?」
「最年少天才祓魔師の待ち受けが…りんごうさぎ…ぷぷっ…」
「うるさい。ちなみに兄さんの待ち受けは?」
「ん?……え〜っ…あ、クロだクロ」
「へぇ。見せて」
「…クロならそこにいるんだから、実物を楽しめ」
「写真で見るクロも悪くないと思うし」
「嫌だ」
「……あ、あんな所に500円玉が!」
「えっ、どこ!?」
「隙有りっ」
「ぬぁあぁあっ!騙されたぁっ!」
「まさか引っかかるとは」
「返せ!!」
「返さない。どれどれ…。…あ…」
「馬鹿馬鹿!雪男なんか嫌いだっ!」
「僕は大好きだけど。いつ撮ったの?これ」
「……」
「こら兄さん白状しなさい。おやつお預けするよ」
「…お前が、本に夢中だった時…」
「なるほどー。まさか、この最年少天才祓魔師を気配無く盗撮するとは。感心したよ」
「るさいっ!お前なんか大っきらいだ!」
「僕は物凄く大好きだけど。でもさ、やっぱ写メより実物で楽しむべきじゃない?」
「…だからさっきそう云ったろ」
「ごめんね。おいで兄さん」
「がるる…う〜…ぎゅ…」
「良い子だね。むぎゅ」
「うぅ…」
「今度一緒に写真撮ってお揃いにしようか」
「…りんごうさぎはいいのか?」
「また、剥いてくれたらいいよ」
「…お前も少しは練習しろ」
「可能性として、もし指を負傷し」
「もういいから…ちゅっ」
「ん。ちゅっ」
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因みに今の雪男の待ち受けはサンプル2(携帯に最初から入ってる綺麗な山の画像)
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「兄さん、りんご買ってきたよ」
「おー。赤くて旨そう。早速食うか」
「うん。はい、剥いて」
「甘えてないで、たまには自分で剥いてみろよ」
「……僕?」
「そうお前」
「もし万一指を切ってチョークが握れなくなったらどうしよう」
「ないない」
「それとも銃が握れなくなって、任務に赴いた時に攻撃出来ずやられちゃったりとか」
「ないないない」
「或いは試験管持ったときに上手く力が入らずに中身の硫酸が零れて火傷したりするかも」
「ないないないない」
「もしくは重たい資料を」「いい加減にしろ。深読みしすぎだ」
「常に最悪の事態を想定して、危険を回避するのは祓魔師としての基本だよ」
「どや顔してないで、りんご位さっさと剥け」
「…兄さんが悪魔に見えるよ」
「わりぃ、突っ込みづらい。ほら、ナイフ」
「僕は銃以外の武器は握りたくないんだ」
「安心しろ。果物ナイフで闘う祓魔師はいねぇから」
「くっ…」
「ほら早く」
「…兄さん、お願い。りんご剥いて?」
「…うっ…なんだその甘えたモードは…」
「頼りになる兄さんなら剥いてくれるよね?」
「ひ、卑怯だぞ!兄心を擽るとは!」
「だって、僕には兄さんしか頼れないし…ちっさいころ、いつも剥いてくれたよね?」
「くそっ…いやいやいや…甘やかしちゃダメだ甘やかしちゃ…」
「兄さん……いや…おにいちゃん。おねがい」
「…だーっ!!!待ってろ!!兄ちゃんがウサギさんにしてやるっ!!!日本…いやっ、世界一可愛いウサギさんを作ってやる!!!」
「フフッ。流石おにいちゃん。大すきだよ」
「くそー!!!!」
■□■□■□
勝者 奥村雪男(弟)
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