「ねぇ、プレゼント持ってきた?」

「え、何のプレゼント?」


教室に着くなり、いつもより数倍テンションが高くて突然変なことを聞いてくる友人を少し不審に思いながらも、律儀に学の無い貧相な頭で色々と考えてみたが、正直言って何もわからない。七夕は昨日終わったし、そもそも七夕にプレゼントなんて用意しないだろう・・・と考えていたとき、友達が信じられないとでも言ったような顔で私をまくし立て始めた。


「あんた、本当にわかんないの!?今日は7月8日!沖田王子の誕生日なんだよ!」


友人が言うには沖田王子とは我が銀魂高校が誇るイケメン集団の一人、隣のクラスの沖田総悟という男子生徒であり、そのルックスの良さから周りの皆から”王子”などと呼ばれているのだそうで。生憎私は実物を見たことないけど。


「ってか何でその王子が話に出てくんの?私たちクラスも違うんだから関係無いじゃん?」


頭にハテナを浮かべながらそう意見する私に対して友人はまたもや信じられないといった様子で溜息を吐いた。


「だーかーらー、今日の午後は授業そっちのけで王子の誕生日パーティーが開催されるの!わかった?」


・・・うん?分かんない。てか何で一生徒の誕生日ごときに学校総上げでパーティーなんかするんですか?と問いたいところだが、ここは銀魂高校。いわば、何でもありなのだ。この間のこどもの日の次の日なんてお供えかと思うほど体育館いっぱいにマヨネーズが大量に設置されていたのだからここまでくるともう何でもありなんだろう。
まぁ、真面目な生徒ではない私にとっては授業がなくなるんならありがたいことに変わりはない。



そして、あっという間に午前の授業が終わり、“一日遅れの七夕祭”別名、“沖田王子の誕生日パーティー”が始まろうとしていた。・・・が、出席する気などサラサラ無い私は夏のサボりに恰好の場所、冷暖房完備の図書室へと向かった。


図書室に入り浸って数十分。眠気が押し寄せて来てうつらうつらと船をこいでいると、ガラガラと図書室の扉が開く音がした。


「何でィ、先客が居たんですかィ」


今時珍しい独特の江戸っ子口調に反応して、顔を上げると、どこかで聞いたことがあるような、蜂蜜色の綺麗な髪に可愛らしい顔をした男子生徒が入ってきたようだった。


「サボりはいけやせんぜィ」


なんて言いながら、どこからか漫画を取りだし、当たり前のように私の目の前に座り始めた男子生徒。


「ってかそっちもサボってんじゃん」


ごもっともな意見を言うと男子生徒は「これも風紀委員の仕事でさァ」とわけのわからないことを言い出した。


「いやいやいや風紀委員ならサボっちゃダメでしょ。ってか風紀委員なら今日が誕生日のどこぞの王子のために仕事しないといけないんじゃないの?」


私がそう言うや否や何がおかしかったのか男子生徒はプププ、とお腹を抱えながら笑い出した。


「・・・何」


笑われたのが気に触り少し不機嫌な表情でそう問いかける間も、男子生徒は何がそんなに面白いのか目に涙すら浮かべている。


「アンタ、名前何て言うんですかィ?」


やっと笑いが止まったと思えば、男子生徒は私に名前を聞いてくる。この人今まで私の名前知らなかったのかと言いそうになったが、そう言えばこっちもまだ名前を知らないわけで、失礼なのはお互い様ということだ。


「みょうじなまえですけど。そっちは?」


「なまえか。俺ァ沖田総悟って言うんでさァ」


いきなり呼び捨てされたんだけど、って、え?今何て言った?沖田総悟?おきたそうご?いやいやいやいやまさか。あれだ、同姓同名だよ、


「ちなみに俺、今日誕生日なんでィ」


確証きた。目の前に居るのは他の誰でもない沖田王子本人だった。ってかエスパーかよ!何で私の考えてることわかるんだよ!


「顔に書いてるんでさァ。」


「ちょ、怖いって!本当に私の心ん中読まないでよ!ってか何、本当に沖田総悟なの?」


私が疑うような目で見ると、またもやお腹を抱えて笑い出す目の前の男子生徒・・・もとい、沖田王子。


「・・・いやァ、久しぶりに面白いモン見つけやした」


と何やら私をジロジロと眺めては一人で納得している王子をしばらく観察していると、突然バン!と図書室の扉が開いて、瞳孔かっ開きの男子生徒が入ってきた。
確か、この人はこの間のこどもの日のマヨネーズ男だ。マヨネーズ男は「総悟ォォォォォォ!!」と叫びながらこちらに向かって来た・・・と思えば、さっきまで隣に居たはずの王子の姿は無く、そこには一枚のメモ用紙が置いてあるだけだった。


 “今すぐ俺に、誕生日おめでとう。ってメールしろィ。そしたらさっきのこと許してやらァ。”


もしかしなくても私はとんでもない人に目を付けられてしまったらしい。


080707/201207



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