いつものように副長と沖田隊長と俺の三人で屯所の中庭で話しているときだった。


「ねぇ、総悟!私のプリンどこか知らない?」


そう言いながら勢い良くやってきたのは、女中のなまえちゃん。何でも局長たちとは武州の頃からの知り合いらしく、この通り鬼の副長と恐れられる副長やドS王子で有名な沖田隊長を前にしても動じていない 。というかむしろ馴れ馴れしいくらいだ。


「残念ながら知りやせんねェ。なまえがおやつの時間に食べようと大事にとっておいた文明屋のプリンなんて」

「いや、それ絶対知ってんじゃん!!!てか何でそんなことまで知ってんの!?」

「一々煩せェやィ。プリンの一つや二つ食ったぐらいで騒いでんじゃねェやィ」

「やっぱり食べたのかあああ!!」


やれやれ、また始まってしまったらしい。と言うのもこの二人、理由があれば何かと文句の言い合いや小学生レベルの喧嘩をしているのだ。その度にその喧嘩に巻き込まれる俺や副長の身にもなってほしい。


「全く・・・痴話喧嘩ならよそでやってください」


と俺が喧嘩を止めようとした瞬間、どこからか空き缶が二つ飛んできた。っていうか何で空き缶?


「「いっけね、手が滑った」」

「絶対手滑ったんじゃねーだろ!明らかに今狙ってたじゃないですかァ!」


そう返す俺に対して、二人はさっきまでの険悪なムードが無かったように憎たらしいドS級の顔で、声を合わせ始めた。


「人聞き悪いですよ、ただ空き缶投げた方向に山崎さんが居ただけなんで。ね、土方さん」

「そうでさァ。勝手に被害妄想してんじゃねェやィ。ねぇ、土方さん」

「勝手に俺に話に振ってんじゃねェェェ!!」


どうやら俺の次は副長がターゲットにされたらしい。案の定副長は怒りを溜め、今にも二人を追いかけそうだ。


「これくらいで何キレてるんですかィ?土方さん。そんなんじゃ明日にでも禿げちまいやすぜィ?」

「ぷぷぷ、禿げた土方さんとか想像しただけで笑えてくるんだけど」


そう二人が言い終えると同時に副長の額に怒りマークが隠れ見え、ピキ、とを立てたような気がした。


「・・・てめェら二人、そこに居直りやがれェェェェ!!」


「行くぜィ、なまえ!」

「よしきた、総悟!」


そう言うが速いか、二人はほんのさっきまでいがみ合っていたのが嘘みたいに手を取りあて、恋人のように街へと駆け出して行った。



 (ふざけんじゃねェェ!)
 (頼むから他所でやって下さい。)


08070/201206

prev | top | next
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -