座ってすぐに横から、


「綾華さん!今までどちらに行かれていたんですか?!」


沢村くんの唐突なこの質問に、救われたような気がした。
私は『ロンドンだよ』と言えば、『ろ…っロンドン…!』と驚く沢村くん。
そんなに驚くことなんてないのに。
すると、隣の御幸が、


「今までずっと?」


と鋭い視線で私を射抜くように見ている。
怒ってる、絶対怒ってる。
わかっているから私は、視線を外して言う。


「初めの2年はオーストラリアに留学してて、その後は大学の関係でずっとロンドン」


私がそう言えば、更に沢村くんは『かっけー!綾華さん!』と騒ぐ。
その隣では、小湊くんが『ちょっと静かにしないと!栄純くん!』と学生の頃と変わらない立ち位置で沢村くんを静めていた。


「…でも今日、イギリス−日本間は運休だって言ってたぜ?」
「前から今日は大荒れだってわかってたから、ニ日前から今日はニューヨークで友達と遊んでから帰って来たの」


こんなに国際的になるだなんてあの頃は思ってもみなかった。
ある意味、あの高校生活が私を変えたと言っても過言ではない。
おかげで国際色豊かになって帰ってきたつもりだし、いろんな所を見て学んだ知識も豊富になったはずだ。


「…桐沢先輩って高2が終わってすぐに渡られたんですか?」


今まで黙っていた降谷くんがそう発する。
…降谷くんにはお世話になったなと思い返す。

―――『何、してるんですか』
―――『この子…っ降谷くんじゃん』
―――『行こ!』

あの光景は今もまだ、思い出す。
彼は、ある意味私の恩人だ。


「…うん、そうだよ。青道の交換留学制度を使ってね」


誰にも言わなかった。
学校の誰にも言わずに水面下で先生や親たちと決めて行った。
当時、彼氏だった御幸にも言わずに。




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