私は御幸に連行され、遂にバスまで連れて行かれてしまった。
けどここらで私は切り出す。


「御幸。本当に、ここら辺で…」
「うるさい」
「いや、でも本当に…」


先輩たちに迷惑かけるでしょ、と。
私は正論を投げかけて、私は逃げようとした。
そんな考えは御幸にはお見通しだったようで、バスガイドに『お帰りなさいませ』と言われ、荷物を渡す。
倉持は自分のを、御幸は私のを渡して。


「ねえ、御幸。本当に…っわぁ?!」


よっぽど私の抵抗がうざくなってきたのかどうかは知らないが、きっとまた私が逃走を図ると思ったのだろう。
御幸は私を軽々と担ぎ始めた。
お姫様抱っこなんて素敵なものじゃない、色気も何もない俵担ぎだ。

バスの運転手に御幸は『一人増えるから、後で追加で料金支払います』と言う始末。
スキニ―履いてて良かったと本当に思った。
スカートだったら笑い事なんかじゃないよ。

そしてバスの中に入って行く御幸。
カーテンで閉め切られている中は、外での光景なんて見えていなかったのだろう。
先輩と思しき人たちが『やっと帰って来たぜ、御幸』と言う声がしていた。


「ちょっと、御幸。先輩達待たせるってどういう…」


『神経してんの?』と。
きっと先輩方はそう御幸に言おうとしていたんだろう。
けれど、私のあられもない姿に、驚いて声が出てなかった。

ああ、もう、本当に有り得ないんだけど…。
私、大丈夫かな、生きていけるかな。

そう思いながらもズカズカと入って行く御幸。
さらに私に向けられる好奇の視線。
私は意地でも顔を上げるもんかと下を向いていた。
すると、


「御幸先輩、綾華さん!こちらっす!」


という、沢村くんの声がした。
その声に、『えっ、あれ桐沢先輩?!』というような声がした。
多分、その声の多さから、これは青道高校OGのバスなんだろう。
“先輩”と言われる方は、御幸がニ年の時の三年の先輩方のことを差しているのだろう。


「倉持、お前そこ座ってくんね?」


と御幸が指した席は、多分御幸と倉持が座っていたのであろう席のひとつ前の通路の…所謂、補助席だ。
きっと、私が逃走する恐れを回避したいがためだろう。
よっぽど私、御幸に逃走するっていうトラウマと言うか…そういうものを植え付けてるんだなあと思った。


「へいへい。お前らマジ早く修復しろよ」


倉持は何も言わずに御幸の指示通り座って。
一方の私も、窓際に座らされた。
当然、私の横には御幸がドカッと座った。

…横からの威圧がたまらなかった。


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