「純さんに言われてじゃなきゃ、って言うのが腹立つ」
「まあまあ。それでも私が書くって決めたの。私自身が決めて、行動したからには違いないでしょ」
「…なんか腑に落ちねえ」
「細かいことは気にしない」


そんな小さな子供が怒るようなことで怒るのだから、御幸もまだまだ子供っぽいところがあるんだなあと思ったら安心した。

家でワンセグでこっそりと御幸のニュースを見た。
そこにいた彼は、あの空港で会った彼とはまるで別人だった。
テレビの前でのあの『何でも叶えます』『どんなことでも可能にできます』というような澄ましたような彼しかもう、いないのかと思っていた。

けれど、ここにはちゃんと、私が知ってる御幸がいた。
それが、嬉しかった。


『そんな気の小さい男じゃないでしょ』と私が笑って言えば、『そういう所からしても、何か丸め込まれてるような気がする』と運転しながら言う御幸の表情は、時折試合で見せるような、険しい顔をしていた。

なんて顔をしてるの、とは言えなかったけれど。


「話変えてもいい?」
「…まあ、いいけど」
「私ね、モデルの仕事、もう一度しないかって言われてるの」


私がそう言うと、『へえ、すごいじゃん』と本当にそう思ってくれているのだろう、少し驚いたようなトーンで御幸は言う。


「意外とね、CherioのAyaka Kirisawaっていう名前は売れてるらしくってね」
「ああ、らしいな。俺の球団のスタッフもファンって子がいてさ。驚いたよ」
「何?その驚いたって。私だってすごいのよ」


『自分で言うか?』と笑う御幸。
御幸だってそうでしょ、と言えば、まあそうだなと笑う。



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