家が遠くに見える。
御幸が運転する車内では、ゆったりとした時間が流れていた。
こんなにゆっくり御幸と会うのは久しぶりなのに、久しぶりな気がしない。
まあ、会っていたからかもしれないけれど。

ふいに思い出すのは、やはり学生時代で。


「弟、いたことに驚きなんだけど。俺」
「まあ、会ったことなかったもんね」
「紹介してくれよな、水臭い」
「偶々だからね、意図的じゃないから」


そう言うと、御幸は笑う。
帰国した時にはこうして御幸と笑いあえるなんて思ってもみなかった。
素直になっていれば、こんな遠回りすることもなかったのかもしれないけれど。
私が素直になることができなかったから。

けれど、今が幸せだ。
やはり、私の決断は間違ってなどいなかったのだと、思わせてくれる。
私はやっぱり、御幸のことが好きなのだと。
実感した。


「この間ね、御幸の試合を小湊先輩と見に行った時、伊佐敷先輩に会ったんだけど本当にいい先輩だよね」
「亮さんだけじゃなくて純さんにも会ったのか、そういや」
「御幸に手紙でも書けって言ったの、伊佐敷先輩だよ」
「やっぱり?そうだと思ったぜ」


『綾華がそんな可愛らしいことを率先してするとは思えなかったもんな』なんて何気当たっているようで失礼なことを言う御幸に相変わらずなんだな、と怒る気にもならなかった私は、『伊佐敷先輩が手紙書け、って言ってくれてなかったらこうして今一緒にいないってことだもんね』と言う。

感謝しなきゃね、なんて言えば、少し不機嫌そうな顔をする。
してやったり、と思ったのは言うまでもない。

私だって可愛らしいことの一つや二つするんだよ。
そう思いながらも、御幸の不機嫌そうな顔が止むことはなくって。


「なんでそんな不機嫌なの」
「綾華のせいだから」
「私のせいにしない」


元々は御幸でしょ、と言えば、まあそうなんだけどと言う御幸。




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