この間会ったときは、私も素直になれなくて、ただ、自分の気持ちを先行させてただけだったから。
私は、ここが自分の家というのも忘れて御幸に抱きついて。
後ろにいる私の家族には全く目もくれなかった。

「…綾華、ちゃんと挨拶させてくれ」と御幸が言っても、私は抱きついたままだったのだが。


「そんなに今ここで、母さんたちの前で抱きつかなくても、これから御幸くんと二人の時に抱きついて欲しいわ、綾華」


と言うお母さんの声で、ハッとして御幸からパッと離れる。
すると、


「お久しぶりね、御幸くん。活躍はテレビで見てるわ」


とお母さんが御幸に挨拶する。
すると御幸も、


「ご無沙汰してます、今日は突然すみません」


と恭しく頭を下げて言う。
すると、『そんな畏まらなくてもいいのに』とお母さんが言うけれど、御幸は笑って誤魔化す。
そんな中で、驚きのあまり言葉にできていない弟の姿が目に入る。

それに気付いたお母さんもその視線の先にある息子を視界に入れて、『ふふ、想像通りね』と笑う。

その間も、御幸は『えっと…』と竜也の方を見ながら誰?というような顔をしている。


「御幸、これ、ウチの弟なの。金魚みたいになってるけど…」
「マジ?綾華の弟初めて見た」
「御幸くんがよくウチに来てくれてた時には都合良くシニアチームの練習でいなかったのよ」


とお母さんが言えば、


「え、じゃあ野球されてるんすか?」


と御幸も食いつく。


「そうよ。それでも御幸くんには遠く及ばないとは思うけれど、一応大阪の大学を野球で行ってるのよ」
「すごいじゃないっすか」
「よかったね、竜也。あの憧れの御幸に褒められてるよ」


私が竜也に茶々を入れても、いつもならやり返してきたりするのに、大人しくって。
やっぱりまだ状況が理解できていないようだ。




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