私は向こうに行って、それなりの経験をして帰ってきたつもりだ。

無駄なことなんて、何一つしてない。
すべてが、私にとって価値あるもの。

留学した事で、視野が広がって、見えなかった事も見えるようになった。

自分の自信に繋がっていると思ってるし、行って本当に良かったと思う。


でもそれを、彼の隣に立つことに繋げるわけじゃない。

一人でも立てるように。
支えてもらわないと立てないような人間にならないように。



「立つべき人間って何なんだよ…」
「…何なのかは、私にもわからないよ」
「んだよ、それ…」



めちゃくちゃなこと言っているってわかってる。
でも私には、もう一度彼の隣に立つ勇気はない。

ただ1つだけ言えることがあれば、それはただ1つ。
御幸をちゃんと応援してくれる誰か。
御幸の隣にふさわしい人がきっといるはず。

御幸は、あれだけプロで活躍している。
その隣にはふさわしい人が立つべきだ。
その相応しい人は、私じゃない。



「私は、一度御幸の傍から離れた人間だよ。だから、何もとやかく言うことはできないし、言うつもりもない」



倉持はあまり納得がいっていないような顔をしている。

しかし私は自分の意見を変えるつもりはない。
学生時代に出した答えが私の本当の答えだとわかっているから。

たとえ、もう一度彼と私が付きあったとして。
きっと、同じ結果が待ち構えているに決まってる。

昔とはまた違うんだ。
立場も何もかも。
私たちが再び交わることはない。

学生の頃に、無理だったんだから、無理に決まってる。



「昔無理だったからって、それが未来もそうかなんて、やってみなきゃわかんねーだろ」



良くみんなそう言うよね。
けど、それは。





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