「…何で綾華はそんなに御幸を拒絶するんだよ」
「拒絶なんてしてないよ」
「御幸は、この6年間ずっと綾華を待ってた」
倉持は少し声を荒げて、その言葉を言った。
だからだろうか。
その言葉は鮮烈に、私の中に入る。
…待ってた、か。
「綾華が俺らの前からいなくなった時。あいつは2週間部屋に閉じこもった」
『あの御幸がだぞ』と強調して倉持は言う。
正直、ここまでだとは思っていなかったから、私も驚きを隠せない。
御幸は弱さを私に見せようとはしなかった。
部活で何かがあったのかもしれないけれど、私には絶対にそんな素振りを見せることは絶対になかった。
けれど、感情を表に出せなかったわけではない。
『好き』とか、そう言う愛情表現はちゃんと示してくれた。
照れ屋であんまり自分の気持ちをちゃんとまっすぐに届けることは、あの性格だから少し疑問だが、私にはちゃんと伝わってたから。
だから私がいなくなったって少々大丈夫だろうって。
私なんて、“高校時代、少し付き合ってた女”程度で終わるって思ってたから。
あのルックスだ。
そして、あの天才的な技術に恵まれてて。
女なんて、より取り見取りだろう。
だから、正直、空港で合った時も驚いたんだ。
あんなに御幸が、感情のままに行動するだなんて思わなかったから。
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