だからこそ、御幸を思って、こんなに怒ってしまうってことも。
私にはわかる。
これでも私だって、1年間ずっと倉持たちと一緒にいたんだから。
けど、私にだって感情はある。
御幸や倉持たちの感情だけじゃない。
私にだってあるんだ。
「あるかないか、なんて。そんなの、あるに決まってるよ」
だから、会いたくなかったんだ。
そう言えば、倉持は落ち着きを取り戻したみたいで、『悪い』と言った。
でも、正直言って、御幸が羨ましい。
これだけ思ってくれる、友人がいるのだから。
私には、いないから。
「それだけ御幸のことが心配なんでしょ?」
まあ…と部が悪そうな顔で、濁す彼の姿に、学生時代を思い出す。
よくあった。
部活のことで彼らの意見が食い違って、ちょっと口論になること。
懐かしくて、仕方がない。
「でも、御幸なら大丈夫だよ」
きっと、何かがあったのだろう。
倉持が、こうして直接アポイントも取らずに来たんだ。
あれからもしかしたら、何かあったのかもしれない。
でも、御幸は何でもそつなくこなす。
何かがあっても、周りが助けてくれる。
「何があったのかは知らないけど、それを助けるのは“女”じゃないでしょ?…まして、私じゃない」
今日、少しだけだけど、彼の傍にいて分かった。
やっぱり私は、離れて正解だったんだと。
私みたいな、彼を信用できずに離れてしまった女は、彼の傍にいない方がいい。
私は、彼の傍にいるべき人間じゃない。
いる資格なんて、―――ない。
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