御幸くんと憂鬱な種目決め

体育自体は嫌いじゃない。
中学も部活はお遊び程度だったけれどテニス部で、一応シングルスではそれなりの戦績は出していた。ただ、団体戦となれば私はあまり機能しなかったことだけは覚えている。つまりそれと同じで、ただ、体育祭も苦手だ。個人競技じゃなくて団体競技が多いから、迷惑をかけまいと気にしてしまう。…のに。それに拍車をかけるように、今、私は目の前に起こっている事実をただひたすらと理解しようと頑張っている。

≪男女20cm差二人三脚≫の欄に、私の名前が書き込まれていた。つまりは、男の子と一緒に走るということ。


「無理、無理無理無理…!」


全力拒否していると言うのに、クラス委員の子が『大丈夫だって、ミユキは50mも女子の中だったら速い方じゃない』なんて言ってはぐらかす。そう言う問題じゃなくって!と言ってるのに、聞く耳を持ってくれない。

この男女20cm差二人三脚という競技が一番嫌だった。男子と女子の身長の差が20cm以上ないとダメなもので、特典も物凄く高いことで皆気合い入る競技だ。その二人三脚は3組が出なければならないらしく、2組は決まっていたのだが、もう一組が決まらないらしく、そこに私が起用されたのだ。まず私は、男の子自体があまり得意じゃない。幼小中とエスカレーターの女子校育ちだから、関わり方なんて知らない。関わろうと思った所で1日や2日で出来る技じゃない。なのに、


「有希子どうしよう…」
「まあ少し待ってみようよ」


必ず一人ニ個は種目に出なければならない。有希子は男女混合リレーや女子学年選抜リレーに出てて、もう決まってるから、私の行く末を見守ってくれている。倉持くんやら他の運動部の男子女子も同じくリレーなどの特典の高いものに振り分けられたらしく、冷やかし等々に回っていた。


「御幸くんはどうする?」


とクラス委員の子が聞けば、『んー、まあどこでも』なんて言っていたけれど、御幸くんだって運動部。絶対得点の高いものに回されるはず。そう思っていた。…すると、


「じゃあ俺、二人三脚いこっか?」


なんて言い始めた。
えっ、御幸くんが?!なんて周りの女子たちは騒ぎだす。このままいけば、きっと、私が御幸くんと走らなければならない。お願いだ。…それだけは本気の本気で勘弁してほしい。御幸くんの足手まといになりかねない。


「ねえ、ミユキは身長何センチだっけ?」


と聞かれて。嫌な予感が的中した。


「え…」
「何センチ?」
「…っ160ぐらい、かな…」
「ぐらいって何!?ちゃんとした身長は?!」
「ひゃっ、158です…!」


すごい剣幕で問い詰める委員長に本当のことを言えば、委員長が『御幸は?』と聞けば、『179だからギリOKだね』と。21cm差。本気でギリギリだ。けれど、キラキラと輝きはじめる委員長たちに、『やってくれるよね?御幸くん、ミユキ!』と言われて、出来ませんなんて言える雰囲気じゃなかった。御幸くんだって、あまり女子と関わる印象がなかったのに、断る気配もなければ、寧ろそれでいいよって感じだし。


「…どうなるんだろう、有希子」
「さあ?でも良かったじゃない」
「え?」
「変な男子とじゃなくて、御幸くんだもの。きっと、配慮してくれるよ」


有希子のその言葉に、確かにと思った。どの道二人三脚からは逃れられなかったんだから、これで良かったんだと思う。




御幸くんと憂鬱な種目決め
((野球部の彼の足に))
((私はついていけるはずがない))


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