▼ 居候のお話
何を言っているのか理解不能だという顔をする二人をおいて自己完結させてから、軽く説明しようと口を開く。
「あのね、家出計画練ってたのはいいんだけど、家出先どうしよってなってたの。それで、相談しようと思って今日、慊人のとこ来たんだ! 紫呉にぃの家なら高校から近かったはずだしちょーどいいから居候させてもらって万事解決!」
どうどう?この完璧な計画!?
と続ける九恵に二人は言葉もないようだった。
勿論、感心の類いではなく呆気に取られてのこと。
「紫呉のところじゃくても、九恵はここに住めばいいよ」
「学校から遠いからイヤ! ね、慊人、紫呉にぃ、いいでしょ?」
「まぁ、僕はむしろ大歓迎なんだけど、ねー……慊人さんが……」
その言葉に、じぃぃーっと慊人を見つめる。
真後ろに居るから、体を捻らなくちゃいけなくてちょっと見にくい。
「…………はぁ。仕方ないね。いいよ、許可してあげる……」
「やったー! 慊人、ありがとー! 大好き!」
じゃ、今日からね!と言いながら慊人の腕より抜け出た九恵は、準備してくるからと言い残し立ち去った。
止める間もない。
「紫呉……あの子に手を出したら、絶対に許さないよ」
「…………やだなー分かってますよ。九恵は慊人さんのお気に入りですからね」
そんなやり取りがあったことなど、鼻唄混じりに女中に預けていた家出セットを取りに行く九恵には当然、知るよしもない。
「ユキ達や透くんと一緒に暮らせるのか……ふふ、すっごく楽しみ♪」
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