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時間が欲しかった。
考えるための。

突然のことで戸惑った。
いままで誰からも好かれたことなどなかったから…。

「ルーピン…」

『僕は君のことが好きだよ』

好きとは…
愛とは…何なのだろうな…

「スニベリーィちゃーん?」

その時不快な声が背後から聞こえた。

「今一人?良ければお茶しない?あ、もちろんお前は床でだけどなぁ!!」
「ぐぇっ!」

いきなり背中を思い切り蹴られ、持っていた本や教材を派手にぶちまけて倒れる。

「ブラック…」

ブラックを睨みながら急いで杖を探す。
ローブの内ポケット、外、ズボン…

「ねぇスニベルス、探し物って、コレ?」

頭上で声がした。
見るとポッターがにやにやしながら僕の杖を掲げていた。

「返せ、ポッター!」
「やだよ〜…と、言いたいところだけど」

そこでほいっと僕に杖を投げて寄越した。

「まぁ愛するリリーとの約束を破るわけにはいかないし…」

不満そうな顔をしながらも、ポッターはそれ以上何かしてくる様子は無かった。

「チッ…。ジェームズ、お前本気でそんな約束守るのか?」
「当たり前だよ!だってリリーとの約束だもんね!リリーとの!!」
「リリー…?」
「ブ、ブロングズはエバンズさんと…もう君に手は出さないと約束したんだよ…」

僕が聞き返すと、おどおどのペティグリューが答えた。

「リリーが…?何で?」
「知らねぇよ。」
「う、わぁ…っが…」
「おい、お前ムーニーに何した?」

無理やり襟を掴まれ立たされる。
襟を掴んだ拳が喉を圧迫し、むせる。

「ムーニー…だと…」
「リーマスだよリーマス」
「し、しらん…知らない…」
「知らないはずないだろぉ?」
「んっぐ、ごほっ!」

掴まれたまま壁へと打ち付けられ、思わず涙目になる。
これは息苦しいがための生理現象だと、あらかじめ言っておこう。

「し、知らないものはっ…知らないっ!!」
「ふんっ」
「がっは…っ」

腹を殴られ手を離される。
僕は思わず壁をずり落ちた。
しゃがみこみ咳き込む僕と目線を合わせるように、ブラックもしゃがむ。

「い、っつ…」
「なぁ、最近ムーニーのやつはお前とよくいるよな。」
「は、なせ…」

髪を掴まれ無理やり上を向かされる。
その腕を引っ掻いて反撃する。
だがブラックはなんともなかった。

「お前が何かしたからだろ?ん?」
「違う…違う…」
「おいスニベリー。おかげてあいつはすっかり府抜けちまってるんだよ。」

視界の隅に僕らの様子を伺うペティグリューが見えた。
その口端は上がっていた。

「知らないって言ってるだろ、離せ、ブラック…」

ふん、とひとつ鼻を鳴らし、ブラックは言う通り手を離した。
僕はため息をひとつついて立ち上がった。

「スニベリーちゃんっ」
「うぐっ…っぁ、」
「どうした?床で飲むお茶が気に入ったか?ハハハ!!」
「あっ…あ、ん、やめろ、クソ…っ」

ようやく立った僕を一蹴りしてまた尻餅をつく、それから何度も蹴られ、僕は防御しかできなかった。
次に、ブラックが吹っ飛んだ。
何事か、と目を丸くしていたら後ろから声がした。

「汚らわしい。先輩に近寄るな、一族の塵め。」
「レギュラス…」
「先輩、大丈夫ですか?」
「あ、ああ…」
「立てます?ゆっくりでいいですよ。…さぁ、行きましょう。」

レギュラスは僕の散らばった教材を拾って、腕をとった。
そして一度も振り返らずに寮へと帰った。


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