6
bookmark


「僕、薬草学って好きだよぉ」
「そうだろうね、君、植物好きだし」
逃げ出す庭小人草を捕まえながら、セージは言った。
「でも、魔法植物はうるさかったり、暴れたりするからちょっと苦手……」
「そうだね」
背中をトントンと叩いて、種を吐き出させながら僕は相槌を打った。
ネビル、もといロングボトム教授が種を吐き出させたら、庭小人草を前に戻すようにとアナウンスした。
授業が終わると、最初は1人でさっさと出ていってしまったセージだが、今では一緒に行動してくれる。
セージは口数こそ少なかったが、一緒に居て苦ではなかった。むしろ、自分のことをあれこれきかれるよりはずっと良かった。
スコーピウスと会ったのは、そんな時だった。
「久しぶりだなアルバス」
「そうだね」
この日は金曜日で、昼食をとったあと図書館で課題をしようと話していた。
そして図書館を向かっている時に、廊下でスコーピウスと出会った。
「そっちは、友達?」
「あ、うん。セージだよ。セージ、こちらは……スコーピウス」
セージはぺこりとお辞儀をした。
「アル、よかったな。 友達が出来て」
「スコーピウスは? 出来た?」
「ああ、それなりに……」
「そっか、じゃあ……」
「あ、じゃあ……僕もう授業だから」
「うん、またね」
僕らはお互いにきまずくなって、そそくさと会話を終わらせた。
そんな僕をセージは覗き込んできた。
「……苦手?」
「ううん、そんなんじゃないんだけど……」
「そっか。行こう、アル」
セージはそれ以上きいてこなかった。
いつもそうだ。セージは何にも踏み込んでこない。僕のプライバシーを尊重してくれているのか、それとも興味が無いのか。
セージは僕のことを友達と思ってくれているのかわからなかった。友達になろうとは言ったけれど、それは口約束に過ぎない。
友達ってどんなものだか、友達を持ったことのない僕には評価できなかった。ただ、なんだかもどかしい気持ちが付きまとっている感覚は確かだった。
僕もセージには踏み込まなかった。なんだか聞いちゃいけないような、聞いたら嫌われてしまうような気がして、気が引けた。
セージもそう感じているのだろうか?
「うーん、ここわかんないや……」
「……僕も。本、探しに行こ」
今日出ている課題は変身術のレポート課題だった。生き物を非生物に変える時の理論構造を論じなければならなかった。魔法なんて、呪文を唱えれば簡単に扱えると思っていた。しかし、変身術の先生は理論をきっちり理解していないと使えないという。特に、生き物を非生物に変えるということは、命あるものから命ないものに変えるということで、その命はどこに行くのかが問題だった。変えられた非生物は、非生物らしく動いたり、思考したりしない。変えられている間の元の生物がどうなるのか、確かに疑問だった。
僕は魔法構造の理論だけは夢中になった。どこをどうしたらそうなるのか、魔法というごく当たり前の中に隠された疑問を暴くことは、快感に感じられた。
しかし、実力は伴わないのだけれど……。
セージは薬草学や、魔法薬学が好きで得意なようだった。でもそれは、魔法と関係ないところに力を発揮していた。セージは僕にハーブティーをよくいれてくれた。この葉っぱにはどういう効能があって、なんの物質が含まれていて、どういう手順でお茶をいれるのがベストか。そういう話しをたくさん知っていた。もちろんそれは魔法界の薬草ではなく、マグルが好んで飲むような植物だった。それに、セージは漢方という薬を作るのが上手かった。これもマグルの薬なのだが、遠い昔にとある魔法使いがマグルに教えたところ、広がってしまったらしかった。寝つきが悪かったり、寒くて仕方が無い時、その薬を分けてくれた。セージ曰く、お茶も、薬も変わらないらしい。
対して僕には特技がなかった。セージは魔法理論が雄弁なだけすごいと言ったが、いくら理論がわかっても使えなきゃ意味がない。
僕は僕の中のうじうじした部分が、セージをも拒んでしまわないかとても怖かった。
いじめが始まったのは、そんな時だった。



prev|next

[戻る]

top
ちー坊:Remember
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -