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朝目覚めると、セージは部屋を出ていくところだった。
彼はおっとりしているように見えて、朝は早いようだ。
僕はおはようも言えずに、癖がついた髪の毛を撫でつけながら見送った。
朝の支度をして朝食へ向かうも、そこにセージの姿はなかった。既に食べ終わってどこかへ行ったのだろうか。
僕はそんなことを考えながら席に座ったが、ふと顔を上げるとグリフィンドール席が目に付いてしまい、昨日のことを思い出させ、胃のあたりがもやもやしだした。
カットオレンジだけをなんとか食べると、そそくさと部屋に戻り、今日から始まる授業の準備をした。
ついていないことに、最初から魔法史の授業だった。
そういえばスコーピウスは魔法史おたくだったなと思い出す。
僕はというと、先生の話しを、もとい声を聞かないよう教科書に集中して自習の時間にするか、もしくは別の授業の課題をこなす時間にしていた。
授業が始まりしばらくして、みんなの気絶する音が聞こえ出す。
僕の隣にいた生徒は授業が始まる前から寝ていた。
「…………あれ?」
教科書を頭にかぶって寝ていたため気づかなかったが、この子はセージではないだろうか。
そっと教科書をどけると、肩まで伸びた藤色の髪の毛と、教室内でも構わず首に巻かれたマフラーが姿を現した。
「セージ?」
呼びかけても、夢の世界へ飛び立った彼は返事をしてくれなかった。
授業終了の鐘が鳴り、その音でセージはやっと起きた。
「おはようセージ」
セージはゆっくりと顔を上げ、寝ぼけ眼で僕を見ながら、垂れた涎を拭っている。
「…………だれぇ?」
目を限界まで開けているようだが、その瞼はほぼ閉ざされており、こちらを認識出来ないようだった。
「僕だよ、アルバス」
「…………アルバス、ポッターだぁ」
「アー、うん。そうだよ」
「次の授業、行かなきゃ……じゃあね」
セージはゆっくりとした動作で私物を集め、席を立って教室を出ようとした。
「ま、待って!」
その手を僕は掴んでいた。
きょとんと掴まれた手を見ているセージに、僕は言った。
「あ、あのさ、次の授業、一緒に行こう」
「…………うん」
セージは少し時間をおいてから、了承した。
「次は……妖精の呪文」
よりによって、僕の苦手な(魔法全般が苦手なのだけれど)科目だった。
移動中、僕らはジロジロ見られた。
例に漏れず、授業では僕は先生が指示した魔法を上手く扱えず、周りからはクスクス笑われ、先生には追加の課題を言い渡された。
セージは卒なくこなしていたので、どうやら僕よりも魔法は上手いようだ。
また授業が終わると同時に教室を出ていこうとするセージを呼び止めた。
「セージはそんなにあわてて、どこに行くの?」
「……これで午後の授業は終わりだからぁ……ごはんに……」
「それなら、僕も一緒に行かせて。一緒に食べない?」
そう提案し、セージはゆっくりと頷いた。
食堂に向かうと、既に多くの生徒達で賑わっており、テーブルには美味しそうな食事が並んでいた。
セージはミートパイと豆のスープを取ると、静かに食べだした。
僕はまだ食欲がわかなかったけれど、かぼちゃのポタージュをよそってすすった。
「あのねセージ、僕もセージの噂、きいたんだ」
セージはピクリともせずに食事を続けた。
「あの、僕は噂、信じてないから」
今度はセージは僕を「それで?」というようにじっと見つめた。
「あ、あのね、セージ。僕と、その、友達になってくれないかな……」
セージはミートパイを口に詰めながらその言葉をきいていた。
もぐもぐと咀嚼を進め、ごくりと飲み込んだあと、「いいよ」と小さく答えた。
「でも僕がパーセルマウスなのは本当だし、お父さんの家系がスリザリンの血を引いているのも本当だよ」
セージははっきりと述べた。
「そうなんだ……でも、君は純血主義者なの?その、マグル生まれを、憎く思ってる?」
「ううん。僕は、どうでもいいと思ってるよ」
「そっか……。僕、信じてる」
じっと、セージの赤い双眸が僕を捉えた。その目は蛇のようで、また、話に聞いたヴォルデモートを彷彿とさせた。
「どうして?僕のこと、そんなに信じるの?嘘を言っているだけかもしれないよ」
「それは……でも、僕、君と僕には何か似たものを感じたんだ。だから、良い友達になれるかもって……」
「似たものって?」
「それは……家柄のことで、何か言われたり……誤解されたり……」
「……確かにそうかもねぇ。僕たち、いい友達になれるといいねぇ」
セージはそういいながら、笑っていなかった。何か別のことを考えているように、遠くを見ていた。


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