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「学校に……行きたくない……」
「どうして?」
「父さんにはわからないよ。でも、家にも居たくない」
ガラガラとトランクを引きずり父さんから逃げるようにホグワーツ特急へと乗り込む。
僕はスコーピウスが羨ましかった。頭の中では、彼も自分と全く同じ状況なのだということがわかっていた。でも、グリフィンドール寮に身を置く彼が底なしに眩しくて、自分が醜く感じてしまい、なんとなく彼のことが嫌になっていった。
彼がキョロキョロと誰かを探している姿が窓の外に見えた。
彼の視界に入りたくなくて、僕はなるべく奥のコンパートメントへと入り、ローブにくるまって目を閉じた。
列車の走行音と、車内販売の声で目を覚ました。
窓の外を見ると、まだまだホグワーツには遠い。
ふと向かいのソファを見ると、見覚えのない少年がそこに座っていた。
肩まで伸びた藤色の髪に、赤い目をして、緑とシルバーのマフラーを巻き、緑のローブを着ていた。
スリザリンだ!
僕は少しそわそわした。
少年は、僕のことをまるで気にしていなかった。手には綺麗な花……僕には名前がわからなかった……を持って、開いたり、閉じたり、花弁を舞わせたりしていた。
「それ、なんて花……?」
僕の声が小さかったのか、少年はまだぼんやりと花を弄るだけで、反応しなかった。
「ねえ、君は誰?僕は…………アルバス」
今度はもっと大きい声で言った。
少年は今僕の存在に気が付いたようにはっと顔を上げ、赤い目で僕を見つめた。
「……セージ」
セージはポツリと言い、また目線を花に戻した。
「セージ、君は花が好きなの?」
「……うん」
「それ、なんて花なの?」
「……ひめかおり」
セージは必要最低限のことしか喋らなかった。
「もしかして、僕と話をするの、嫌なの?」
「…………アルバスは、僕と話がしたいのぉ?」
逆に聞かれてしまった。
「うん。いや、君が嫌なら話はしないけど」
「そう。ごめんねぇ、僕が同じコンパートメントで」
「えっ?なぜ?」
「アルバスは、僕を知らないのぉ?」
「うん……。ごめん。君こそ、僕が気にならない?」
「ううん。別にぃ。僕、君のこと知ってるよ。君のことポッター家のスリザリンって、みんな言ってるんだけど、僕、意味がわからなくて……。気にしてるぅ?」
やけに眠たげに、ゆっくり喋る子だった。
「あ、うん。いや、ううん。えっと、それは……」
「悪口のつもりなのかなぁ。僕も、よく悪口言われるんだ。だから、誰も僕と仲良くしたがらない。君は珍しかったんだぁ」
「ア、僕君が……なんて言われてるのか知らなくて」
「…………うん。それなら、いい」
セージは少しだけ表情を動かし、彼の噂は教えてくれなかった。
セージは駅につくと何も言わずにさっさと出ていってしまった。
僕は追いかけるように素早く後に続いたけれど、セージの姿は人混みに紛れ、見つけた時にはもう馬車にのり(セージ1人で1台の馬車を使っていた)、学校へと向かってしまっていた。


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