じっ【牧←宮】からん、と音をたてて氷が溶けた。
グラスに注がれた麦茶は半分ほどまだ残っている。
向こうのグラスにも、同じほどの量が残っていた。
目の前には、双子の弟が居る。
何故かはわからない。
何しに来たのかと尋ねても、
「兄さんを見に」
しか言わない。
私を見て何が楽しいのか。
そんな変な弟はほうっておいて執務に取りかかる。
ごくり、と一口麦茶を飲んだ。
ああ、兄さん。知らないでしょう、あなたがどんなに妖艶か。
その額、眉、睫毛、瞳、唇、頬。
喉に喉仏、首筋から鎖骨…。
言い出したらきりがない。
とにかく好きです。
好きで、好きでしょうがない。
その麦茶一口飲む動作だって色っぽくて艶めかしい。
好きです。
それでもあなたは気づかない気づかせない。
さらさらと文字を書く少し骨ばった手も指も好き。
見ているだけで充分。
満たされる。
心以外は。
だって、こんなこと言ってみるとする。
嫌われるだけだろう?
なら内に秘めておくのが得策だ。
関係が壊れるくらいなら言わない方が。
でも言ってみたい。
言って、あなたの反応を見てみたい。
拒絶するか、はたまた受け止めてくれるのか………。
後者の可能性が低いうちは、いいたくない。
負けるのはきらいだ。
じっと兄さんを見つめながら、麦茶を一口飲んだ。
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