2011/07/24 17:18
▽無防備すぎるよ(SS/ぬら孫・馬頭丸)


※デフォ名:名無




「げ、また来てんのあの陰陽師娘」
牛鬼組の腹心が本家預かりとなり、まだ数日。仕事の手伝いも一段落しふらふらと屋敷の中を歩いていると向こうの方でリクオが学友を連れて歩いているのが見えた。どうやら牛鬼組との件がある前に一度来たらしいのだがその時来陰陽師娘がやけに疑っているらしく――それに加え妖怪好きの学友がいたく気に入ったのもあり屋敷に度々リクオが学友を連れてきている。リクオは優しい、というか人が良すぎるから強く断れないんだろう。だが、屋敷にいる妖怪からしてみればいつ見つかるか、…滅されるのか冷や汗ものだ。せめて来る時は先に連絡よこせ!

すっと妖気を消し物陰に隠れる。きゃいきゃいと騒がしい声が部屋に納まると急いでその前を通り過ぎた。今日は部屋で大人しくしていよう。簡単に滅されるほど柔じゃないけど痛いのはごめんだ。なんて思っていると後方に人の気配。すぐさま縁側から屋根の上に跳び移る。
くるりと屋根から下を覗くとまたあの陰陽師娘が他の人間を連れて歩いていた。しかもリクオがいない。リクオォオオ!何してんだよ、ちゃんと面倒見やがれ!それにリクオがいないなら側近の雪女か青田坊がしっかりしろよ!アイツらも学校とか行ってんだろ!これだから本家の奴らは!


このまま降りるのは危険極まりない。屋根伝いに戻ろうとカタカタ瓦を鳴らしながら走っていくと先の廊下に馬頭の頭が見えた。って、なにアイツ堂々と廊下歩いてんだ。アイツ前にあの陰陽師娘と戦ってただろ…。見つかったらいろいろ面倒そうだ。ったく、世話の焼ける…!

「馬頭っ!」
ダッと走る速さを上げ陰陽師達よりも先に馬頭の前に立つ。馬頭はいつもと変わらない調子で表情を和らげた。

「あれ、名無じゃん。どうしたの…って、うわあっ」
「このバカ馬頭!お前滅されたいのか!」
「はぁ?」
「いいから大人しくしろ!」

このまま逃げ回るのも面倒だから一度奴らが通りすぎるのを待とうと近くの部屋に馬頭を抱えて跳び込む。誰の何の部屋かは知らないが失礼は十分承知だ。しかし滅されるのは嫌だしリクオの学友の前でどんちゃんする訳にもいかない。がふがふとわめく馬頭の口をおさえ必死に障子の向こうの気配を探った。どたどたと騒がしい足音が徐々に近づいてくる。アイツらもホント飽きないな…。
足音がより近くなったことに緊張して馬頭を抱える腕の力が強くなった。

「…………、」

ちゃんと気配を消せた馬頭と私に気づくことはなかったのか陰陽師達は派手な音を立てて部屋の前を通りすぎてゆく。ほーっと溜息をつくと腕の中の馬頭がまた暴れ出した。あ、悪い。

「ぷはっ!もう名無ってばいきなり何するんだよ!」
「ごめん。でもあの陰陽師娘と鉢合わせになるのは嫌でしょ」
「うー…。まあそれはそうだけどー」

座っているせいで同じくらいの高さにある馬頭の髪を撫でると馬頭は甘えるように抱きついてきて私の腹に顔を埋めた。甘えたな馬頭には珍しいことではないけれどやっぱり少し恥ずかしい。牛頭には甘やかすなって言われるけど引きはがしにくいんだよなー。あ、でも頭の骨はとって欲しいかな。痛いです。

「馬頭、離れて。もう大丈夫だろうから部屋戻るよ」
「やーだよっ」
「やだじゃないでしょ」
「だってさ、」

私の腹から顔を上げた馬頭はにっこりと笑った。すっと馬頭の手が私の頬に触れる。

「名無と二人っきり、だよ」

ぺろりと舐められた頬に自分の熱が集中した。




馬頭が可愛すぎるって話。(……)
ぽんぽこぽんぽこ!!







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