2011/07/03 13:58
▽トアル村のとある姉弟5(SS/黄昏)



※gdgd





「なにあれ…」
城下町での買い物を終え、村に戻る途中。ハイリア湖のそばでコッコと男の人が対峙していた。片やぎらぎらした目で相手を見上げ、片や剣を片手にコッコを睨みつけている。こっちは見間違いでなければ冷や汗つき。もちろんあのままではコッコの勝ちである。
あの男の人が誰だかは知らないけれどあのままコッコにやられるのもかわいそうだ。一度痛い目を見ている自分からすると同情せずにはいられない。なので助け船を出してあげることにした。

「コッコ!」

ポーンと投げられたパンのカケラに視線を奪われる一人と一匹。コッコは見事それにつられバタバタと羽を動かしパンの方へと跳ねて行った。コッコは賢いけど単純な生き物だ。

「……」
緊迫した空気が一気に解けたものの買い物帰りの村娘と謎の剣士さんという不思議な組み合わせが取り残されてしまった。よくみるとこの人リンクに似てるなあ…。声をかけた方がいのだろうか。剣士さんと視線は合うものの何かお話しそうな雰囲気にはなりそうもなかったので、おとなしく帰ることにした。踵を返し一歩踏み出そうとしたところで意外なことに後ろから声をかけられる。

「オイ、オンナ」
「…はい?」
「……」

オンナ、とはなんだ。もっと、こう他に言葉があってもいいと思うのだけれども。しかし彼は眉間に皺を寄せて私を見ている。まるで、言葉に詰まっているようだった。
剣士さんと視線を少しの間合わせていたが彼の唇が動く気配はなかったので再び村へと足を進める。すると後ろの気配がついてきた。不思議に思い首だけそちらにむけると剣士さんが私の隣に並ぶ。

「あの…」
「…この先は魔物が出るぞ」
「でも村に帰るにはここを通らなくちゃいけないので」

生憎村までの馬車を逃してしまった。次に出るのを待っているのも退屈だったので森を抜けることにしたのである。といっても森に出る魔物はあまり大きいものはいないし、油屋さんとかもいる。実は来る時も森を通ってきたのだ。リンクに言うと怒られるから言わないけど。
私の返事を聞くと剣士さんは私の先を歩き始める。いまいち状況がつかめなくて立ち止まっていたが、剣士さんが振り返って私を見たので把握した。あぁ、送っていってくれるのか。

「優しいんですね」
「…うるさい」




「ただいまー…ってあぁぁああ!?」
「わ、おかえり。リンク」
夜にだいぶ近づいた夕方。弟が牧場から帰ってきたと思ったらいきなり大声をだすから、びっくりして肩が跳ねた。

「いきなり大声出さないでよ」
「姉さん、その人ダレ?」

帰ってきたばかりの弟は眉間に皺をよせ、お客様に指をさす。こら、失礼でしょう。しかし、基本誰にでもにこにこして優しそうな顔を振りまいてるリンクが初対面の人にこんな態度をとるなんて珍しい。てっきり知ってる人なのかと思ったのに。
「えと、ダークさん。今日たまたま知り合って家まで送ってもらったの。お礼に夕飯食べていってもらおうと思って」
そういうとダークさんはチラリとリンクを見る。リンクはまだ不機嫌な顔のままだ。人前でこんな顔をするなんて本当に珍しい。

「リンク…、ホントに初対面なの?」
「うん。…初めまして。弟のリンクです」
訝しげな視線のままリンクはダークさんの前に座る。ちょっ、そこは私の席なんだけど。しかしリンクの席は本日お客様が座っていらっしゃるし、リンクも仕事で疲れているだろうから先にご飯を食べてもらいたい。仕方ない、先に二人にご飯を出してしまおう。シチューとパンを二人の前に置くとダークさんは私を見上げ口を開いた。

「…オイ、オンナ。お前はどこに座るんだ」
「私は、後から食べますのでお先にどうぞ」
二人で先に食べて。と笑うと二人して口をへの字に曲げる。同じような顔に見上げられてなんだかおかしくなった。

「姉さん、俺の膝の上座る?」
「ばかじゃないの」
「冗談なのに」
あんたの冗談は冗談に聞こえないのよ。そんなやりとりをしているとダークさんが立ちあがり私の腕を引いてさっきまでダークさんが座っていたところに座らせられた。

「え、あ、ダメです、ダークさん!ダークさんにはちゃんと食べてもらわないと!」

帰ろうとするダークさんの腕を掴んで引きとめる。せっかく今日がちょっとおいしく作れたんだし、あ、いや、そんなことより送ってもらったお礼も兼ねてるんで、そんなコッコのことなんていいですよ釣り合わないです!私がダークさんを引きとめダークさんが私を座らせ、とドタバタしているうちにいつの間にかリンクが地下からお客さん用の椅子を持ってきて座っていた。…ごめん。



「やっぱり、こうみるとダークさんとリンクって似てますね」
パンをちぎりながら言うと二人して私の方を向く。色はまるで正反対だけど顔のつくりから髪型までみーんなそっくりだ。双子みたい。

しかし二人はそれが気に食わないようで先程からばちばちと細かな火花を散らしていた。うーん難しい。


「オイ、オンナ。コイツは本当にお前の弟なのか?」
スプーンをリンクの方に向けダークさんが私に聞く。お行儀が悪いですよ。
「はい、一応。ていうか、いい加減オンナってよぶのはやめてもらえませんか」
「俺にとってオンナはお前しかいないんだから別にいいだろ」
「……ん?」
実によくわからない人だ。ダークさんにとっての女の定義って一体何だろう。

「あんまり、姉さんに手出さないでよ」
「…うるさいなヤツだな。“弟”が口出しすることでもないだろ」
ぱくりと大きな口でスプーンをくわえるダークさん。リンクは眉間に寄せた皺を深くさせて一層ダークさんを睨みつけた。だからなんでこんなに仲が悪いの!


*


「ダークさん、今日は送ってくれてありがとうございました」
「…俺の方こそ」
家の前で見送るとダークさんは私の髪をくしゃりと撫で森の奥へと消えていった。
ダークさんってどこに住んでいるんだろう…。ハイリア湖の近くなのかな。


家に入った途端、不機嫌な顔のリンクと目があう。
「リンク…どうしてそんな不機嫌なの。姉さん何か悪いことした?」
そう聞くとリンクは少しバツが悪そうな顔をして視線を逸らす。

「…よくわからないけどアイツと俺は相容れない関係なんだ。本能的に。多分あっちも気づいてる」
椅子から立ち上がったリンクは私の目の前に立つ。必然と持ちあがる視線は青に固定された。

「…姉さんを…」
そこまで言いかけてリンクは言葉を切る。私を…?一体どういう事なのか。やけに真剣な目で私を見るから聞き返せない。
「いや、なんでもない」

くるりと体を返してリンクはテーブルの上を片付け始める。私も片づけないと。でもいつもと調子の違うリンクに気を取られてしまい殆どリンクに任せてしまった。






gdgd(笑)
それにしても夢主は一体どんなルートで帰るつもりなんだ。

リンクとダーリンが相いれない設定はとある姉弟シリーズに限ります。ので、他の話ではふっつーに仲良かったりもっと仲悪かったりするかも。ヤキモチ+よくわかんない感情でもやもやする弟。特に裏設定があるわけではない。←







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