2011/05/24 10:13
▽トアル村のとある姉弟3(SS/黄昏)





「(この花…どうしたんだろう)」

ちょっとした散歩から帰ってくるとテーブルの上に見覚えのない花籠があった。黄色のちょっと大きな丸い花をメインに小さな花がバランスよく並んでいる。

(黄色、黄色…)


私が知らないってことはリンクなんだろうけど、リンクが花を買うなんて珍しいなーなんて思っていたら部屋の奥から本人が出てきた。

「おかえり、姉さん」
「ただいま」

何か飲む?と冷蔵庫を指差すリンクに今はいらない、と返すとリンクはそのまま私の方に来てイスに腰かける。

「俺に何も言わず出掛けないでよ」
「でもリンク城下町に降りてたじゃない」
「そういう時は出掛けないで」
「(理不尽…)」


この家をやりくりしているのは誰だと思ってるんだ。私が出掛けなくちゃ今日の夕飯の材料すらないんだぞ。
第一リンクが牧場に行ってる時なんて一体何時間うんぬんかんぬん。
言いたいことはたくさんあったのだけれど上手く言い負かされてしまうのが目に見えていたので何も言わず私もイスに座った。


するとやはり視線を引く花籠。
黄色い花が可愛い。メインだから引き立てられてるっていうのもあるんだけど、一番大きくて、でも周りの花を潰してしまうこともなくて、一番優しい気がした。


「この花、気に入った?」
「へ?」
「今日、城下町で貰ったんだ」
「……ふぅん」


いつもならそういうのは断るのに。くれた女の子が余程可愛かったのだろうか。我が弟にもようやく春の兆しとは。喜ばしいことだ。

「確かに、リンクみたいな花ね」
「そうかな」
「そうでしょ」

あげた子だってきっとリンクに似合うからこの花籠を選んだんだろうし、もしかしたら全部花を選んで造ってもらったのかもしれない。それに、

(黄色は、リンクの色じゃないか)




「で、ちゃんと相手の名前は聞いたの?」
「は?なんでさ」
「なんでって…珍しく貰ってきたってことはリンクも相手の事が気になったんでしょ」
「……ハァ」
「なに、そのため息。私が弟の恋路に興味をもっちゃいけないの」
「んー、」


はぐらかすリンクにちょっとだけムッとした。なによ、いつも姉さん姉さんっていうくせに。こういう事には突っ込んで欲しくないって言うの。

ムスッと唇を尖らせてリンクから視線を逸らすと弟が笑ったのがわかった。


「ごめんって姉さん」
「教えてくれないとヤダ」
「教えるもなにも、俺、くれた子の事覚えてないよ」
「は?」
「その花はみた時に姉さんに似合いそうだと思ったから貰ったんだ」


だから、相手の人の事は覚えてくるの忘れちゃった。
そういってリンクは私の手を握る。こいつ、ナチュラルに手を繋ぐんじゃない。


「もしかして姉さん、妬いた?」
「……は?」
「だって相手の事、凄い気にしてた」
「そんなつもり、は」
「ない、なんて事はないでしょ」


確かに、相手の事は気になったけどそれは弟の恋路が気になっただけで別に「俺の事好きじゃないヤツが俺の恋なんて気にしないだろ」でもアンタは私の弟で、

わたわたおどおどとあれこれ並べるとリンクは握った手のひらに力を込めた。
だからなんで手繋いでるの。


「別に言い訳しなくていいよ、姉さん」
「言い訳じゃな…」
「俺が好きなのは姉さんだけだから」
「だから違うってばああああ!!」





俺みたいな花が似合うってことはやっぱり俺と姉さんはお似合いなんだよ。





久しぶりに姉弟かいたら凄く楽しかったです。やっぱり姉弟設定は好きです。








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