膝丸と出られない部屋


「こ、これが噂に聞く出られない部屋…!!ほんとに実在してるとはねぇ…」

「どういう事なのだ姉者。気が付けばこの妙な部屋に閉じ込められていたがまさか姉者の悪戯だったのか?」

「違う違う。これはあれだよ、二次創作とかでよく見る○○しないと出られない部屋ってやつだよ」

「出られない部屋…?む…確かにドアには頑丈な鍵が掛かっているようだな。他に出入りの出来るような場所も無さそうだ」

「ほら、あそこにお題が書いてあるでしょ。あの通りの行動をすればこの部屋から出られるってからくりなんだよね。えーっと、なになに……お互いの好きな所を五つ言わないと出られない…?」

「なっ、なななんっ……!!」

「あら、案外簡単なお題だったねぇ。キスしないと出られないとかセックスしないと出られないみたいなハードなやつだったらどうしようかと思ってたけど優しいお題で助かった〜」

「キ、キッ…!?…セ…!?んんん、ゴホン…あ、姉者は随分とこの妙な部屋について詳しいようだが、まさかこのような経験が他にもお有りなのか…?」

「まっさか〜!ないない!流石にこんなご都合展開は初めてだよ〜!」

「そ、そうか…。しかしこのお題とやらに従わずともこの俺が壁を切り捨ててしまえば良いなのではないか?」

「内側からいくら攻撃しても無駄なんだよなぁこれが。お題をクリアする以外に方法はないと思った方が良いだろうね」

「そうか。姉者がそう言うのであれば潔くそのお題とやらに従おう」

「おお、男らしい〜!それじゃあ私からいくね!」

「待ってくれ姉者。まずは俺から言わせてくれ。男として先に君に恥をかかせるわけにはいかん」

「ヒエ〜かっこよさが極まってるわ……こんな男前に好きな所五つも言われて生きてられるのかな私……」

「それでは参るぞ。まず一つに…俺は姉者の笑った笑顔がとても好ましいと思っている。姉者は普段からよく笑うお方だが特に俺達刀剣男士に向ける慈愛に満ちた微笑みは海のように深い愛情すら感じさせてくれるのだ…。だが姉者のその笑顔が好ましいと思えば思う程この表情が俺だけに向けられたものだったら、と醜い欲が出てしまう事もあるな。姉者は純粋に清らかな心で俺達に微笑みを向けてくださっているだけだというのに独占欲を抱いてしまうとは俺もまだまだ修行が足りんようだ。二つ目はなんと言っても甘味を食べている時の緩み切った表情で、」

「ちょっ、ちょっと待った膝丸さん………そういうガチめのやつ……!?もっとこう、簡単に省略して言ってくれれば良いと思うんだけどな!?」

「これでもかなり簡潔に纏めたつもりなのだが…?」

「んんん〜…そっか…ありがとね膝丸…でもお姉ちゃん身が持ちそうにないからあと1/100程度に纏めてもらえると助かるな……」

「そ、そうか…姉者がそう言うのであれば仕方がないな…。では、二つ目に姉者が甘味を食べている表情…三つ目は不機嫌そうにむくれている時だな。まるで幼子のようでつい甘やかしたくなってしまうのだ。四つ目は勇ましいお姿だ。姉者は女人にしておくには勿体ない程惣領としての才がある。主も君の逞しい背中を見て育ったからこそ俺達刀剣男士を見事に纏め上げ戦にも勝利し続けられているのだろう。五つ目は……お、俺の頭を優しく撫でてくださる手だ…。姉者に初めて頭を撫でていただいた時の事は今でも昨日の事のように鮮明に覚えている。一見小さくて柔く、俺が力を込めれば簡単に握り潰してしまいそうな手が俺の髪を滑る度に指先から君の優しさと暖かさを感じるのだ……」

「尊死……」

「どうしたのだ姉者!?まさかどこか身体の具合が悪いのか!?」

「くっ…破壊力が強すぎた……これだからイケメンは……!!」

「無理はしないでくれ姉者…。姉者が無理をしなくともこの俺がなんとしでもこの部屋から出る方法を見つけよう。もしも出られない結果となったとしても何も恐れることは無い。姉者にはこの源氏の重宝、膝丸がついているのだからな」

「ア゛ーーッ!!ま、眩しいっ!!目が!目がァーーッ!!」

「あっ姉者ぁ〜〜ッ!!!」

「はぁ……眩しすぎて目が潰れるところだった……源氏重宝こわい……」

「大丈夫なのか姉者!?眩しいと言っていたが俺は何も感じないようだな……まさか妖物の類か…!?」

「この無自覚発光元め〜!!やばいな、これ以上ときめかされると本気で人生詰んじゃうわ…早くここから出なきゃ…。よーし膝丸、次は私のターン行くよ!膝丸の好きな所ベスト5!」

「ま、待ってくれ姉者!まだ心の準備が…!!」

「ええい問答無用!!第5位!泣き虫なところ〜!!趣味が悪いと指をさしたいならさすがいい!だがこればかりは譲れない!普段はキリッとしててかっこいいのに兄者に名前を忘れられて瞳を潤ませる膝丸の可愛さときたら…!!」

「なっ…!?俺はそのように泣き虫な男ではないぞ!?」

「まさかの無自覚…!?あざとさがカンストしてるじゃん…最高かよ…。じゃあ次は第4位!なんと言っても優しい所だなぁ。膝丸って言葉に出さずに相手を思いやる奥ゆかしさがあるよね。私が落ち込んでる時なんかは何も聞かずにそっとしておいてくれるしわざわざ万屋街まで走って私の好きなお菓子を買ってきてくれたりするでしょ?その優しさがすごく嬉しくてじーんときちゃうんだよねぇ」

「そ、そうか……姉者にそう思って頂けたのなら俺も本望だ…。だ、だが俺とて誰にでも優しくするというわけではないのだぞ、姉者…」

「うんうん、私の事すごく慕ってくれてるもんねぇ。よーく分かってるよ。いつもありがとね膝丸」

「いや…そういう事ではなくてだな…」

「膝丸の好きな所第3位はかっこいいところ!ちなみに第2位は可愛いところなんだけど、膝丸と言えばこのかっこよさと可愛さのギャップが強い所が数ある魅力の中でも群を抜いてると私は思うわけですよ。いつもは近寄りがたいくらい鋭く引き締まった顔が私を見つけた途端ふにゃっと緩んじゃうとこなんて特にたまらなさすぎて毎度卒倒しそうになるわ。世界中にうちの膝丸の可愛さを自慢して回りたいくらいだね。でも可愛いばかりでなくかっこよさも兼ね揃えてるもんだからずるいんだよなぁ…。こっちが可愛がってるつもりでもいつの間にか甘やかされる側になってた時なんかはやっぱり私より何枚も上手で敵うような相手じゃないんだなぁって改めて思い知らされるよ。千年も生きてきた故の懐の大きさって言うのかなぁ…膝丸の言葉には一つ一つに重みと真実味があるからね。そういうところもかっこいいなぁって思ってるよ」

「んんんん…」

「あらま、耳まで真っ赤…かわいい…嫁にしよ…」

「か、からかうのはやめてくれ……姉者にそのように褒め殺されて今の俺はどうにかなってしまいそうなのだ……」

「この可愛さもまた然り…それじゃあ最後に第1位いくよ!」

「なっ…!?待ってくれ姉者!!これ以上は身がもたんぞ!?」

「クックク…私の褒め殺しに酔いな…!膝丸の好きな所第1位!私を慕ってくれるとこーーー!!」

「ぐうっ……!!」

「初めて出会った時はおっかなそうな刀だなぁと思ったけどすぐに私に心を開いてくれたよね。私に刃を向けた事を謝りたいって真っ直ぐ向き合ってくれたし私を姉者って呼んでくれた時は本当に嬉しかったなぁ。うちの弟や皆の前では背筋がピンと伸びたかっこいい膝丸なのに私の前では笑ったり泣いたり怒ったり色んな表情を見せてくれる所も私を慕ってくれてる証拠なのかなって思うとついデレデレしちゃうんだよねぇ。それから今だから言える話なんだけどさ、実は髭切が顕現したら膝丸は髭切ばかり構って私の事なんて忘れちゃうんじゃないかって心配しちゃったんだよね。だけど膝丸は髭切がこの本丸に来てもそれまでと変わらず私の事を姉者姉者って慕ってくれたからすっごく嬉しかったんだよ。あはは、なんかごめんねぇ。クソデカ感情が爆発しちゃった。…おっ、扉が開いたよ膝丸!これで外に出られるね!思ってたより案外チョロいもんだった…って…あれ…!?急に倒れこんじゃってどうしたの膝丸!?」

「あ、あねじゃ……い、いとおしい……ぐはっ…」

「ひ、膝丸ぅーーー!!!」


PREVTOPNEXT
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -