姉者と膝丸と呪い
「は!?膝丸が呪いにかかった!?」

「ああ…時間遡行軍の中に呪術を使える厄介なのが居たらしくてな。政府からも稀にそういった奴がいるって事は聞いてはいたけどまさかうちの膝丸が呪術を掛けられる事になるとは…。ああ…ちゃんと対策を考えてなかった俺の責任だ…」

「まぁ今更泣き言を言ったって仕方ないよ。今アンタができる最善の事をやんなさい。反省はその後だからね」

「ああ…。政府には連絡して呪術師に来て貰えることになったんだ。前例もある事だし呪解には何ら問題はないらしい。だけど呪術師が来られるのが明日の夕刻頃になるらしくてさ…。辛いけどそれまで膝丸には頑張ってもらわないといけないな…」

「そういえばその呪いってどんな症状が出てるの?やっぱり漫画とかでよく見てる苦しんだり寝込んだりする類のやつ?」

「い、いやぁ…それがかなり厄介な呪いでさ…。焦ってつい姉ちゃんに応援を頼んじゃったけどできれば膝丸には会わない方が良いかもしんない…」

「膝丸がそんな事になってるのに放っておけるわけないでしょうが!ハッ…!まさかそれって創作によくある発情系の呪いじゃないでしょうね!?この本丸内でR18なんてお姉ちゃんは許しませんよ!!」

「ちげーよ!!むしろその逆!!」

「逆〜!?え、なに常に賢者モードになる呪いにでもなってんの?膝丸は元々ストイックで性欲なんてないんだからそんなの通常モードじゃん」

「いや、あいつもちゃんと性欲あるしむしろ持て余してる……ってそうじゃないって。どうやら好意が逆転する呪いみたいでさ。好意を持ってる相手を嫌悪して逆に敵意を抱いてる相手に好意を向ける類の物らしい」

「つまり時間遡行軍は自分たちに好意を向けさせて戦力を削ろうとしたと…」

「そういう事。幸いそんな事になる前に勝利できたんだけどさ。でも帰還するなり膝丸に冷たい目線で見下ろされたもんだから怖すぎてちびるかと思った……理性はあるみたいだけど俺に敵対心抱いてるみたいだしめちゃくちゃ怖い……」

「成程ねー。もしかして髭切に対してもそんな感じなの?」

「髭切には嫌悪感を感じないらしい。そこは流石二振一具って感じだよな。そういう事だから冷えきった膝丸に罵声浴びさせられたくなかったら姉ちゃんは膝丸に近づかない方が………ってオイ!!どこ行くつもりだよ!?」

「野暮な事を聞いてくれるなよ弟。膝丸の様子を見に行くに決まってんじゃん」

「さっきの話聞いてた!?俺でも絶対零度の睨みきかされたんだよ!?普段あんだけ姉ちゃんに懐いてんのにその好意が逆転したらどうなるか分かってんのか!?」

「あのねぇ弟…。膝丸はあんたを守ってくれる大切な刀だしいつも姉者姉者って私を慕ってくれる可愛い弟分なんだよ…………そんな相手に冷たくされるなんてレア過ぎてこんな機会見逃せるわけないでしょ!あばよ弟!」

「あーーっ!!やっぱり姉ちゃんなんて呼ぶんじゃなかった〜〜!!」


弟の断末魔を背中で受け流し早足で源氏兄弟の部屋へと向かう。
弟には冗談交じりに言ったものの、呪いが解けた後に主だけでなく私にも冷たい態度を取ってしまったとあれば膝丸が落ち込んでしまうのは目に見えているのでこっそり様子を伺う程度に収めておこう。


「おや?妹じゃないか。来てたんだね」

「おわっ!び、びっくりした…髭切かぁ。部屋に居るもんだと思ってたからいきなり現れてびっくりしちゃった」

「厨へ羊羹を取りに行っていたんだよ。甘い物でも食べてば弟の…えーっと、ぴよ丸も落ち着くんじゃないかと思ってね」

「膝丸な〜〜!そっか、髭切は良いお兄ちゃんだねぇ…。膝丸の状況はうちの弟から聞いたよ。大変だったね」

「大変というほどでもないよ?でも好意が裏返しになるというのは厄介なものだねぇ。さっきも弟が普段から大事にしている本を弟自ら切り捨ててしまって部屋中が紙くずだらけになってしまったんだよ。お蔭で今僕たちの部屋は床一面に春画が広がっている状態というわけさ」

「いやそれ大参事〜〜!!てか大事にしてた本ってエロ本かよ!!性欲ないとか言ってごめんね膝丸〜〜!!」

「ありゃ、妹は弟に性欲がないと思っていたのかい?あはは、あっははは!面白い!」

「大ウケですやん…。まぁその話は置いておいて…他に何か困った事はない?流石に直接会うのは膝丸が気の毒だからこっそり様子だけ見ておこうと思ってね。私になにかできる事があればいいんだけど…」

「そっとしておくのが一番じゃないかな。あの様子じゃ君の事も邪険に扱ってしまうだろうしね」

「やっぱりそうかぁ。そんじゃ今日の所は大人しくドロンさせてもらうよ。呪いが解けた後にまた来るからね」

「うん。お土産はジャンポールエヴァンのチョコが良いなぁ」

「弟の名前は覚えられなくてもジャンポールエヴァンがスラスラ言えちゃうのかこの兄は〜〜!!しかも財布への打撃が強すぎる!!ダースチョコで我慢しなさい!!」

「うんうん、あれも美味しいよね。楽しみにして……あ…」

「あれ、どうしたの髭切…。……うげっ!」

「……そんな所で何をしているのだ、兄者」


私たち以外に人気のなかった廊下にスっと透き通るように冷えきった声が響く。
私の背後に向けられて髭切の視線を追うように恐る恐る振り向けば黄金色の瞳が鋭い光を帯びて私を見下ろしていた。


「ありゃ、部屋で待っているように言ったのに…えーっと」

「膝丸だ兄者。部屋の片付けを終えても兄者が戻って来られないので何かあったのではないかと様子を見に来たのだが……成程、部屋を出てきて正解だったようだな」

「そ、それじゃあ私は帰るね髭切くん!膝丸もまたね!」

「……待て」

「ぐえっ!」


敵意むき出しの視線で私を睨みつける膝丸に居たたまれずその場を逃げ去ろうとするも、ひょいっと首根っこを掴まれ呆気なく退路を阻まれる。
顔を上げて膝丸の顔を覗き込めば嫌悪感たっぷりの冷たい視線で見つめらてしまって弟が怯えていた気持ちが痛いほど分かってしまった。成程これは養豚所の豚を見る目だ。


「…君は主の身内というだけの理由で本丸に足繁く通っているようだがここは君のようなただの人が入り浸っていい場所ではないのだぞ。ましてや源氏の重宝である我が兄の行く手を阻むなど見ぬほど知らずにも程がある…」

「ただ廊下でお喋りしてただけだよ弟」

「兄者は黙っていてくれ。俺はこの者の図々しさには前々から嫌気がさしていたのだ。この本丸は戦争のさなかにあるというのにのうのうと間の抜けた顔で我ら兄弟の前に現れるなどあまりにも目に余る振る舞いではないか」

「ま、間の抜けた顔って……源氏のディスりきっついな…」

「まぁ落ち着きなよ弟。三人でのんびり羊羹でも食べようか」

「えっこの状況で三人仲良くお茶する流れに持って行く!?」


緊迫した空気をものともせずに相変わらずマイペースな髭切に思わず頭を抱えた。
うう〜ん…確かにこの膝丸の態度は普段とは180度違っている…。姉者姉者と私を慕ってくれていた面影は全く無いし、私がこれ以上無礼を働こうものならいつでも切ると言わんばかりに腰に携えた刀に手を伸ばしている。
流石に呪いにかかった状態の膝丸には切り殺されたくないしここはさっさと帰った方が身の為だろう。


「お誘い頂いたのに申し訳ないけど私はもう帰らせてもらうね。それじゃ!」

「待て!!」

「ヒィッ!な、なに!?」

「兄者が茶席に招いているというのに人の分際で断るというのか!そのような愚か者はこの膝丸が切り捨ててくれよう!」

「うわーーんやっぱりこうなるんじゃ〜ん!!助けて髭切−−!!」

「むむ…この羊羹栗が入ってるね。妹も一口食べない?」

「いや和んでないで助けろください!!!!」

「あ、兄者を盾にするとは小賢しい…!!そこへ直れ。この源氏の重宝膝丸が直々に首を跳ねてやろう。主の血縁者へのせめてもの情けと受け取るがいい」

「まぁそうカリカリせずに甘い物でも食べようよ…えーっと、ひじまる?」

「膝丸だ兄者!!」

「そうだったね。弟も妹も座って羊羹を食べようか。まさか兄の八つ時に埃を立てるような事をするつもりじゃないだろうね?」

「…申し訳ない、兄者」

「え、マジで羊羹食べる流れなの?めっちゃ殺気立った目で睨んでますよお宅の弟さん。視線だけで殺されそうなんだけど」

「元気があるのは良い事だよね」

「んん〜〜そうだね…もうツッコミ入れるの疲れちゃったよ…。開き直って羊羹食べよっと」

「うんうん、君のそう言うところはとっても良いと思うよ」

「…兄者。あまりその者と仲良くするのはやめてくれ。それにたかだか人の子を妹と呼ぶなどとはお戯れが過ぎるのではないか」

「ありゃ、いつもはこの子を姉と呼んで慕っているのはお前の方じゃじゃなかったかい?」

「どういう事だ?俺がこのような者を姉などと呼ぶはずがないだろう兄者」

「こりゃ完全に記憶塗り替えられてますわ。仕方がない事とは言え切ないなぁ…」

「よしよし。あんまり弟が虐めるもんだからこの子が傷ついてしまったようだよ」

「む…本当の事を言ったまでだ。兄者を口車に乗せて味方に付けようとは小賢しい娘め…」

「くっ…もう何言ってもダメだ…好意メーターがマイナスに振り切れとる…私のピュアなハートはもうズタボロだよ…」

「まぁそう言わずに仲良くやっていこう。呪術師とやらが来るまで一緒に弟を支えてあげようじゃないか」

「いやいやタイミング見て帰りますって。こんな状況で夜を過ごしたら寝首かかれる事間違いないじゃんよ〜…まったくもう…。ほら、お茶が入ったよ」

「あひはほう」

「お礼は口に詰まった羊羹飲み込んでから言ってねー。はい、膝丸の分」

「…お前のような人の子が淹れた茶など飲めたものか。兄者も口をつけないでくれ。なにが盛られているやら分かったものではないからな」

「盛ってない盛ってない。膝丸もずっと気を張りっぱなしで疲れたでしょ?お茶でも飲んで少し落ち着いた方が、」

「……要らんと言っているのが分からないのか」

「ひゃっ」


膝丸に差し出した手が強く払い除けられ、湯呑に入った熱々のお茶が私の腕にかかりそうになるのを間一髪のところで避けることができた。
つ、辛い…これは辛すぎる…。普段あんなに私を慕ってくれている膝丸に手を上げられてしまうとは。
姉者姉者と私の後ろを雛のようについて回るいつもの膝丸を思い出してじわりと目頭が熱くなってしまう。


「……くっ…!」

「え…どっ、どうしたの膝丸!?」

「む、胸がっ…苦しい…っ……」

「でぇーーー!?もしかして呪いの影響!?ど、どうすれば……」

「苦しいなら寝かせてあげればいいんじゃないかな」

「それだ!!膝丸、ゆっくり横になってね。髭切!膝丸の枕出してあげて!」

「う〜ん、それが生憎虫干しに出していてここにはないんだよね」

「そんなら座布団でも良いから!!」

「ありゃ、座布団が外の世界に旅立ってしまったよ」

「なに窓の外に座布団フルスイングしとるんじゃーー!!!えっなんで!?なんで投げたの!?全然意図が読めないんだけど!?」

「困ったね…これじゃ弟の頭を支えるものが何もないじゃないか…」

「いや投げたのアンタでしょうが!!」

「ああ!そこにちょうどいい枕があったね。可愛い弟の為にその肉付きの良い枕を貸しておやりよ妹」

「肉付きが良いは余計…って膝枕しろってか!?んん…まぁ仕方ないか…。ごめんね膝丸、嫌だろうけど背に腹は代えられないと思って耐えてね…」

「…うっ……な、なにを……!?」

「よいしょっと…。髭切、うちの弟のところに行って状況が変わったから大至急呪術師の人に来てもらうよう言ってもらえる?政府に断られたら奥の手を使ってでも押し通せって言っておいて」

「分かった。弟の事を宜しく頼むよ」


私の膝に乗った膝丸の頭をポンと撫でた髭切はいつもの柔らかい笑みを浮かべて部屋を後にする。
手の甲で顔を覆うように隠している膝丸の表情を見る事ができないが、どうやらかなり苦しいらしく下唇をぐっと噛みしめるように堪えている。
私に介抱させる事への悔しさもあるのかもしれないけれど今はそんな事も言っていられない状況なのだ。少しでも気が楽になるようそっと前髪を撫でるように触れれば膝丸の肩が大きく揺れた。


「なっ、何をするのだ…!?」

「こうすれば落ち着くんじゃないかと思って……けど逆効果だったかぁ。嫌ってる相手に触れられるのは嫌だもんね」

「……」

「気分はどう?すぐにうちの弟が呪術師を呼んできてくれると思うからもう少しだけ我慢してね。大丈夫、きっとすぐに良くなるよ」

「……君が…」

「ん?」

「先程俺に手を払い除けられた君が、傷ついた顔をしているのを見て心臓が張り裂けるように苦しくなった…これは一体なんなんだ……」

「そっか…。やっぱり膝丸は優しいね」

「優しい…俺がか…?優しいというのは俺のような者ではなく兄者のように懐の大きな者の事を言うのだぞ……そうだ……優しく、柔らかな声で包み込む、暖かい日差しのような……」

「膝丸…?」

「……腕は…」

「えっ?」

「…腕に茶がかかっていただろう。火傷を負ったのではないのか…」

「ああ、さっきのね。寸でのところで避けたから大丈夫だよ。ありがとね」

「何故礼を言う。俺は君を言葉で心を傷つけただけではなく危うく火傷を負わせかけた相手なのだぞ…」

「傷つけられたって火傷させられたって膝丸にされた事なら全部許せちゃうんだよ。っていうかそれもこれも元はと言えば全部時間遡行軍のせいだからね。次に会う事があったらマジであいつらぶっ飛ばすわ」

「それは俺達刀剣男士の役目だろう…。君が……君のような者が奴らと対峙するなどあってはならん事なのだ…」

「うん、そうだね。ありがとね膝丸」


顔を覆っていた手の平がそっと退けられ黄金色の瞳が私を見上げる。
鋭くもどこか不安げで、まるで幼い子供が母親の機嫌を窺うかのような視線にできるだけ柔らかい笑みを返せば慌てて視線を逸らされる。
さっきは撫でるのを躊躇った手でもう一度膝丸の頭を撫でれば、ぎゅっと閉じられた瞼が次第に力が抜けていった。


「しばらく寝てていいよ膝丸。髭切が帰ってきたら起こしてあげるからね」

「…このような…情けない姿を兄者に見せるわけには……」

「髭切が部屋に入ってくる前に起こすから大丈夫だよ。髭切の足音は大きいから遠くに居ても分かっちゃうんだよ?」

「…そうだな…兄者の足音は大きいのだ……俺ならば眠っていようがすぐに気づくことができる」

「そうだね。おやすみ、膝丸」

「……あね…じゃ……」


静まり返った部屋に規則正しい寝息が響く。
頭を撫でる手を止めてホッとため息をつけば音を立てずに廊下に面している襖がそっと開かれた。


「次から妹の事を猛獣使いと呼ぼうかな」

「あだ名をつけたって覚えられないでしょ…。っていうかやっぱり廊下に居たんだ」

「悪いな姉ちゃん、手間かけて…。こんな状態の膝丸まで手懐けるなんてすげえな…」

「うんうん、流石は主の貴姉殿だね」

「よしよしもっと褒めて。それで呪術師さんは?」

「姉ちゃんに言われた通り奥の手を使ってすぐに来てもらった。政府の緊急転送ゲートを使って駆けつけてきてくれたよ」

「ど、どうも〜…お邪魔しております…」

「お忙しい中ありがとうございます。早速だけど膝丸の事宜しくお願いします」

「へえへえ、お任せください。なんてったってこちらは政府にとても重要な審神者様ですからね。ええ、わたくしめの力を尽くして呪術を解いてご覧に入れ……あれっ?」

「えっ、どうかしましたか?」

「こ、これは…呪いの大部分が解けかかっていますね……まさか審神者様のお姉様は呪解の心得でもお有りで…?」

「一ミリたりとも心得た記憶はございません」

「まぁ弟に掛けられた呪術は不完全だったようだからね」

「そうなのか?」

「好意を逆転させられたと言ってもかなり生温いものだったんだよ。でなければ主も君も今頃弟にサイコロステーキのように切り刻まれていたんじゃないかな」

「お、おお……そっか、あの絶対零度の態度はまだ甘い方だったんだな……あれだけでも俺はちびりそうになったんだけどな……はは…」

「何かの拍子に解けてしまいそうな不完全な物だったから衝撃を与えれば戻るんじゃないかと思ったんだよね」

「はは〜ん、だから無理矢理私を部屋に連れ込んだり座布団を投げたり膝枕をさせたと…成程ね」

「そ、それにしたって力のない人間が呪術を解くなど普通ならあり得ない事なのですが……」

「細かい事は気にしなくてもいいんじゃないかな。さぁ、残りの呪いもぱぱっと片づけておくれよ」

「うーん…分かりました…」


納得がいかないと言わんばかりの呪術師さんが呪文を唱えると膝丸の中からなにやら黒い物がスッと抜けていくのを肌で感じた。
目には見えない何かがしばらく宙を舞っていたが、呪術師が瓶の蓋を開けるとその小さな器にそれらが全て吸い込まれてゆく。


「これで良し。それでは私は政府に戻ります。これでもとても忙しい身ですので」

「ありがとうございました」

「政府のお偉いさんに今回の件を踏まえて呪術に関する対策と呪解の手続きを整えるように伝えておいてください。くれぐれもこの件に関して議会で決議された結果をこちらに報告するのも忘れないようにってね」

「え、えぇ…きっと聞き入れてもらえることでしょう。なにやら政府はこちらに頭が上がらない事があるようですからねぇ…。それでは失礼します」

「……はぁー…無事に終わってよかった……」

「見事な采配だったよ主」

「いや俺は何もできてないって……さっきの人も完全に姉ちゃんにビビってたし…。ねえちゃんが無駄に威圧感なんて出すから…」

「本気出せばこんなに早く来られるものを明日になるなんて舐めた事言われてたんじゃそりゃ腹も立つわい!うちの可愛い膝丸をなんだと思ってだっての!」

「やっぱ姉ちゃんには勝てねえな…」

「長子の背中という物はなかなか超えられないものだよ主」

「んん……」

「あ、膝丸が目を覚ますよ髭切」

「ありゃ、ほんとだね。おはよう肘丸」

「膝丸だあにじゃ……ん…?なななんっ、何故俺は姉者の膝の上にっ…!?」

「や、やった〜〜!いつもの膝丸だーー!!ばんざーい!」

「うんうん、源氏バンザイ!」

「バンザーーイ!!いやぁほんとに良かった!!俺が不甲斐ないばかりにごめんなぁ膝丸〜〜!!」

「な、何を泣いているのだ主…。惣領を務める男がそう易々と涙を見せるものではないぞ」

「視線が優しい!!戻ってきてくれてありがとな膝丸〜〜!!」

「い、一体どうしたというのだ?この状況を説明してくれんか姉者」

「んん〜〜全然覚えてないんだね!!それでも元に戻ってよかった!!源氏バンザ〜〜イ!!」

「な、何が起こったというのだ……」



2019.9.2


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